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第6話
「舐めて」
「怜音、君の相手は僕じゃない」
「ねぇ」
「僕は君と同じ、オメガだよ」
「いやぁぁぁぁぁ」
周りの人間を追い出した沖田は、何とか無理やり怜音を連れ、離れに引きずっていった。
「僕の力で君を抱きかかえるなんて不可能だよ。傷がつくけど我慢して」
「んんんんんんんん」
「君の欲しいものはもう来る、だからもう少し待って。いいこだから」
冷静な判断力を失った怜音は、沖田の股間に手を伸ばした。
「これは君のものじゃない」
必死に振り払う沖田に怜音は縋るように、握りしめた。
その手を横から力強く掴み、節くれだった手の主を怜音は、ゆっくり見上げた。
見つめた瞬間の何とも言えない顔は、喜怒哀楽の全てを兼ね備えたようであった。
「あぁぁぁぁぁ、これ、この感触、この匂い」
気が抜けたようにその手に縋りつき、自身の股間に誘導した。
「土方様ぁ――――――――――――――」
片手で怜音を抱きかかえるように力を込める。
土方の胸に無理やり顔を埋めさせられた怜音は、窒息しそうな甘い匂いにただただ後孔から、ドロリとした液が漏れた。
「総司、助かった」
「さっきより落ち着いてますね。薬飲んでいるんですか」
「ああ、本来なら、ほかのオメガの匂いにこんなに反応することは無い。これはどうなっているんだ」
「それより、一つ聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ」
怜音は、土方の匂いに吸い込まれるように猛る自身に手を伸ばし、動物の様にペニスをこすり上げた。
そんな怜音をちらりと見た土方は、怜音の着物の紐を外し、そのまま手首に巻き付けた。
「離して――――――、痒い、逝きたい、逝かせて――――――」
「怜音、後で嫌って程逝かせてやる。だから少し大人しく待っていろ」
怜音を柱にくくり付け、軽いリップ音をさせ、怜音の薄い唇を食んだ。
沖田に視線をやると、こちらはこちらでいやらしい半開きの唇が、キラキラ光る涎を、幾度となく吸い取った。
「もうそろそろ、こっちも困ったことになりそうです」
「総司?」
「今まで、番っても……こんなに……反応したことなんか……なかった……の……に」
「おい」
「蔵まで……行ってる余……裕、なさ……そうなんで、土方さん……そこの引き出しから、白い薬……とって、下さい」
「この引き出しか?」
「ええ」
引き出しに無造作に入れられた白い錠剤。
見たことは無い、これがヒート抑制剤というものか、と土方の頭は存外冷静だった。
何錠必要かわからなかった土方は、引き出しのまま沖田に手渡すと、その動向を見つめた。
「それは何なんだ」
嫌そうに眉間にしわが寄った。
「隣の部屋に連れてって、僕はこれで大丈夫だから」
「こんな薬初めてみるぞ」
「そりゃぁそうでしょう、土方さんはオメガじゃないから」
言われたまま隣の部屋に連れていく沖田の項から、赤くただれたケロイドが見えた。
「なんだこれ」
凍り付くような土方の声に「ちっ」沖田らしからぬ舌打ちが小さく耳元で聞えた。
「総司」
「今はそんなことより自分のオメガでしょ」
「お前だって!」
とっさに口走った土方は、慌てて口をつぐんだ、
「お前だって? お前だって何だというのですか。いくら土方さんとは言え、それ以上言ったら許しません。早く怜音のところに行ってあげてください」
「総司……」
「どっちつかずの男は嫌われますよ」
ちらりと奥の方に視線をやると、縋るように顔をグチャグチャにして泣いている愛しいものが見えた。
怜音は本当に弱いのだ。傷つけるすべてのものから一生懸命に自分を守って、傷つかないふりをする。
「大切なものが何かわからなくなるような、唐変木に興味なんかありません」
総司はそのまま自力で歩き、隣の部屋に引っ込んだ。
「怜音」
「欲しいのぉ、奥挿れて――――。掻きまわして、グチャグチャにしてよぉ。土方様ぁ」
「怜音」
後ろ手に結んだ紐を外し、そのまま細い体を抱え、布団の上にゆっくりとおろす。貪るように唇に食いつき、怜音の噛み切った唇からは真っ赤な血が流れた。
あの時、なぜ番以外の匂いにこんなに反応するのだと聞きたかった。実際に沖田が他のアルファに反応している所は見たことがない。
奥の部屋の総司を気にしながらも、怜音の匂いに過剰に反応している事に土方は驚いた。
「運命の番」
奥に引っ込む前に沖田の口が動いた。
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