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第10話
【第二部】
アルファ・オメガ・ベータ。
今からかれこれ二百年前。
江戸初期から出始めた第二性の存在。
あの頃とは違い、今では全ての人類が何らかの第二性を持っている。
たいていの人間は平凡でありきたりな人生を送り、彼らは世界の歯車となっていた。右も左も大抵はこのベータと呼ばれる第二性で溢れかえっている。
しかしその中にも、類 まれなフィジカルやメンタルを併せ持ち、およそ間違う事など無いのだろうと思わせるようなそんな人間も、確かに存在していた。
彼らはアルファと呼ばれ、政界、スポーツ界、芸能界などトップまで上り詰めようとする者の殆どがアルファで占められていた。
知力や才能にあふれたアルファという人材は、まさに人財と呼ぶにふさわしい逸材ばかりであり、しかしてその数は上位一割にも満たない希少種だった。
逆に、虐げられて生きている人罪はオメガと言って、これまた下位一割にも満たない、まさに稀少種であった。
アルファの家柄のものはアルファと番い、優秀な血から優秀な子孫を求めた。オメガの血をいれたくない、まさにその一言に尽きた。ところが人類の文明が栄えれば栄えるほど、アルファ同士ではベータしか生まれなくなり、いま世界はオメガに注目していた。
人材を、人財と人罪とに分けるようなハラスメント溢れるいやらしい世の中が何十年も続いた昨今、まさに国を挙げての少子化対策としてオメガ保護法が制定される。
強姦やハラスメントで苦しみ、自らの命を絶つオメガの自殺を食い止めようというのが、大まかな趣旨であった。この法律に違反した者には、最低100万円の罰金が科せられるようになり、状況によっては実刑も免れなかった。これにより若者の性犯罪は確実に減り、絶滅危惧種に相当していたオメガの減少もほぼ下がり止めとなった。
男でも子宮を有し、三ヶ月に一回訪れるヒート時には、公的に休暇も認められ、番いになった際には、アルファの番にもヒート休暇が適用された。
パートナーのいないオメガには少しでも苦痛を和らげさせようと、安価で確実な抑制剤が病院で処方されるまでになった。
江戸初期の様に薬も高価な時代では、ヒートになっても大量のフェロモンを垂れ流し、弱い存在のオメガでは、己を守ることもままならず、教科書にも載るほどの地獄絵図だった。しかし今は若干の制約や、おおっぴらにはならない陰口はあるものの、昔ほどの好奇な目にはさらされずに済んでいる。
弱者であるオメガに強制される法律は二つ。
間違えてアルファに首を噛まれたりしないように、外出時のプロテクターの必須。
抑制剤の常備である。
念の為、間違えて中に出されてしまった際に妊娠を免れることができるように、アフターピルの常備も推奨されている。
アフターピルの効果は、事後5時間以内が必須である。
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