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第21話

 ポン、という手応え。 「当たったーっ、でも割れねー」  啓吾がガハハっと笑った。 「でも当たったじゃん。良かったねー」 「そうそう、それに割れてないからまだやれるし」  目隠しをずらして見ると、スイカには棒の形の凹みができていた。 「ちょっと力が足りなかったな」  そう言いながら、耀くんが目隠しの結び目を解いてくれた。 「つぎ私ー」  と華ちゃんが言ったので、耀くんは光くんに目隠しを渡した。 「耀ちゃん、ちょっとズルしたでしょ。碧の向き直した」  姉が寄ってきてボソッと言った。 「いいじゃん、碧の誕生会なんだから」  耀くんは悪びれもせずに言う。    結局スイカは8番目に挑戦した依くんが割った。 「耀くん何番だったの?」 「10番」  僕の問いかけに、くじを見せながら耀くんが応えた。 「去年もそんな番号じゃなかったっけ?」 「そう。去年は9番。俺ほとんどスイカ割りやった事ないんだよね」 「そういえば耀くんが目隠ししてるの記憶にない」 「だろ?」  依くんが真っ二つに割ったスイカを、更に包丁で切ってみんなで食べた。途中まで庭にいたけど、蚊に刺され始めて慌てて家に入った。 「そろそろお開きだねー」  ピンク色に染まってきた空を見て、萌ちゃんが言った。 「片付けよっか、部屋。台所班とリビング班にテキトーに分かれてー。あ、ゴミ集め係誰かやって」 「風船どうする? 割る?」 「あ、私ハートのやつ持って帰りたい」  わいわい言いながら部屋を片付けていく。僕はゴミ袋を出してゴミの分別をする。耀くんは高い所に貼った飾りを外していた。  つい、その背中に見惚れた。  長い手足。伸ばした腕に浮かび上がる筋肉の筋。広い肩と背中。  綺麗だし、格好いい。 「碧ー。ゴミ袋持ってきてー」  姉に呼ばれてハッとした。 「はーい」    もうなんか、悩むのめんどくさくなってきちゃった。  好きの種類とか、どうでもいい。  僕は耀くんが好きだ。  ちかちゃんにもお姉ちゃんにも渡したくない。  それでいいじゃん。  だって好きは好きなんだもん。  でも、恋人ってどんなことするの?  僕はどうしたらいいの?  急がなくていいって言われた返事、こんなすぐにしてもいいの?    分かんないことが多すぎる。  でも一つ分かってることは。  僕は、みんなが好きな耀くんを独り占めしたい。

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