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第26話
部屋の中で立ったまま、スマホの画面を見つめている。
耀くんはたぶん、ちかちゃんと一緒にいる間はスマホを見ない。ちかちゃんが画面を覗いて、僕個人からメッセージがきてたら面倒だから。
だから、1人になるか、ちかちゃんが絶対見ないくらい他のことに気を取られてる時しか見ないと思う。
僕は今、そうしてる。
お姉ちゃんに、耀くんからのメッセージを見られちゃいけないし、見られたくない。
わ
手の中でスマホが鳴った。
やや暗くなってきた室内で、画面がパッと明るくなる。
ポップアップに耀くんからのメッセージ。僕だけに宛てた返信。
ーー俺は構わないよ。
やった!
ーー碧、前に俺が言ったこと、覚えてるよね?
どくん、と大きく鼓動が跳ねた。
ーーー覚えてる。
そう打つ指先が震えてる。
『うちにお前が来て、2人っきりになった時、俺、何するかちょっと自信ない』
あの時耀くんに言われた言葉。
『俺、何かするかもよ? いいの?』
全部ちゃんと覚えてる。
耀くんにメッセージを送って、スマホを握りしめていたら、階段を昇ってくる足音が聞こえた。
お姉ちゃんだ。
明かり、点けないと、あと、立ったままなのもおかしい?
大慌てで部屋を明るくしてベッドに座った。と同時にノック。
「碧、開けるわよ。メッセージ見てるわよね? どこ行こっか、明日」
僕が返事をする前にドアを開けて姉が入ってくる。胸が波打ってるんじゃないかと思うくらい心臓が強く打っている。
「お姉ちゃん。僕、明日図書館に行くから遊びには行かない」
「え?」
「最近行ってなかったからまた行きたいなって思ってたし、読書感想文もあるし」
普通に話そうとしても、どうしても早口になってしまう。喉が渇いて声が掠れそうになる。姉相手にこんなに緊張したことはない。
僕の嘘に、お姉ちゃんは気付いてしまうのかな。
「でも碧」
姉がそう言いかけた時、2人のスマホが同時に鳴った。
耀くんだ。
グループのメッセージに届いた、耀くんの返信。
ーー俺は明日、用があるからパスで。
「えー、耀ちゃんも行かないのー?」
姉の不機嫌な声が耳を滑っていく。
耀くんのメッセージのすぐ後にちかちゃんからの返信が届いた。
ーーちかも明日はやめとく。
ちかちゃんは、耀くんがいないとたいてい来ない。いつからかは覚えてないけど、今思い返すと中学に入った頃からそうな気がする。耀くんが不参加なことがあんまりないから気にしてなかったけど。
「ちかちゃんはホント分かりやすいわね。耀ちゃん狙い」
ボソッと姉が言った。
お姉ちゃんも、耀くんのこと好きだもんね
いけないと思うのに、優越感が湧いてくる。
僕、すごい嫌なやつだ。
姉がスマホの画面に指を滑らせ、僕のスマホがピロリンと鳴った。
ーー碧も行かないって言ってる。結局何人?
ーー6人? 7人? 萌ちゃんが決まってないんだよね。
ーーどーしよっか?
そんなやり取りをしながら、姉は僕の部屋を出て、自分の部屋へと向かった。ドアが開閉する音がする。
ピロピロと着信が鳴る中、敬也からダイレクトメッセージ。
ーー碧行かねーの? なんで?
ーーー図書館行こうと思って。読書感想文の本も決めてないし。
ーー明日じゃなくてもよくね?
ーーー前から図書館は行きたかったんだよ。てか敬也、もう僕がいなくても大丈夫だろ? 完全に馴染んでるし。
ーーまあそうだけど。
そこに耀くんからもメッセージが入った。
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