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第39話

「午後どうするー? 勉強する?」  お昼ご飯の片付けをしながら姉が言った。 「今日結構午前中頑張ったよねー」 「おれ、もちょっとやる。やばい、間に合わねぇ」 「じゃ、テーブル元に戻して、勉強するチームとしないチームで分かれたらいいんじゃない?」  テーブルを拭いて、一卓は元のソファ前に戻した。 「碧はどうする? 勉強するなら見るよ?」  お皿を片付けていると、耀くんがキッチンに入ってきてそう訊いた。 「どうしようかなぁ。本も読みたいんだよね」 「俺は勉強するから、隣で読めば? 飽きたら勉強すればいいし」 「耀くん勉強好きだよね。なかなか「飽きたら勉強すれば」ってセリフは出てこないよ?」 「そう? そうなのかな。自分のことは分からないな」  くすくす笑いながら耀くんが近付いてくる。  今、キッチンに2人っきり。  リビングで依くんが「これ観て。すげー面白い」と言う声が聞こえた。耀くんがちらりとそっちを見て、そして僕をリビングから死角になる冷蔵庫の陰にそっと押し込んだ。  わ…っ  素早く顎を掴まれてキスをされた。  びっくりして目も閉じられない。  耀くんは唇を離して、にっと笑った。    心臓、止まるかと思った…っ!  大きな手で僕の頭をサラリと撫でて、耀くんはキッチンを出て行った。  僕は冷蔵庫に寄りかかって、跳ねる鼓動と上がった息をどうにか落ち着かせようと深呼吸を繰り返した。  まさか、うちでするとは思ってなかった。  とくとくと速いリズムを刻み続ける胸の上に手を当てて、落ち着け、落ち着けと言い聞かせる。  ちょっと自分の部屋に行こう。本も取って来たいし。  顔がまだ熱いから、こそこそとリビングを通り抜けて階段を昇った。みんなまだスマホで動画を見てたみたいで助かった。パタンと静かに部屋のドアを閉めて、もう一度大きく深呼吸をした。  エアコンを入れてないから部屋の中は蒸し暑かった。少しいるだけで汗がじんわりと滲んでくる。これなら顔が赤くても、部屋が暑かったからと言い訳ができそうだ。  読みかけの本を持ってリビングに向かった。  耀くんは午前中と同じ所で勉強を始めてて、僕の座ってた所には僕の問題集とかが置かれていて、他の人が座れないというか座りにくいようになっていた。  敬也も同じ位置で問題集を開いていて、さっきまで姉の座っていた所に依くんが座ってた。  勉強するチームとしないチーム、てゆーか、男子と女子で分かれた感じ。    僕は耀くんが僕のために確保してある彼の隣の位置に座った。  耀くんが僕の方をちらりと見た。 「本読むことにしたの? 碧。ていうか部屋、随分暑かったみたいだね」  そう言って笑って、バッグの上の方に置いてあったタオルで僕の汗を拭いてくれた。  体温が上がって余計に汗が出る。  正面の依くんは「またやってる」くらいの顔で僕たちを見て、再び教科書に目を落とした。    みんなに僕たちはどう見えてるんだろう。  

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