58 / 110

第58話

ーーおはよう、碧。明日の最終の便で帰ることになったよ。明後日には会えるかな。  翌朝、目覚ましのアラームより少し早い時刻に、メッセージの着信音が聞こえた気がした。  ぼんやりとスマホを開いて、一気に目が覚めた。  明日の最終便。  会えるのは明後日。  長い 遠い  でも期限が切られてる方が、あてもなく待つよりはいい。  今日も入れて2日間。どうやって過ごそうか。  今日はたぶん、午前中からみんなが来る。  一緒にいれば気が紛れるのか、それとも余計に耀くんがいないことを淋しく感じるのか。  ベッドの上にむくりと起き上がって、カレンダーを見た。  たった2日  ほんの2日  なんて長い、2日間 ーーーおはよう、耀くん。連絡ありがとう。明後日、遠いよ。  許されたのをいいことに朝っぱらから甘えてみる。 ーーごめんな。長いよな。  予想通りの慰めの言葉をもらって安心する。 ーーー本、たぶん今日読み終わるよ。耀くんは? ーーこっち来る機内で読み終わったよ。祖母の面会の時間まで、もう後は勉強するしかない。  そのヒマの潰し方はちょっとやだな。 ーーーきっとみんな耀くんに質問のメッセージ入れるよ。 ーーああ、それもあったな。  早く会いたい。  それしか浮かんでこなくてメッセージが続かない。 ーー碧、明後日、図書館行こう。  わ ーーーうん。いく。  帰ってきた次の日。2人で会える。 ーーでもね、母はその日まで休みだから家には母がいる。どうする? 買い物ぐらいは行くかもしれないけど。でも碧の家に行くよりは2人の時間は持てると思うよ。 ーーーうん、それでいい。うち来たら2人は無理だし。  うちに来たら、耀くんはみんなの耀くんになる。僕のだけど、僕のじゃなくなる。  それはやだ。 ーー分かった。時間とかはまた後で決めよう。 ーーーうん。楽しみ。 ーー俺も碧に早く会いたい。  その一文を、長いこと眺めていた。スマホの画面がパッと消えて、ようやく自分がメッセージを見つめたまま固まっていたことに気付いた。  朝食を終えて片付けて、部屋に戻るとスマホが鳴った。  グループの方に耀くんからのメッセージ。 ーー明日の夜に帰るから、明明後日には顔を出すよ。  すぐにまたピロリンと着信音。 ーー明後日じゃないの?  お姉ちゃんだ。  ーー明後日は用があるから。  その耀くんの返信に何人かが不満を漏らしていたけれど、さっちゃんが「耀ちゃんにだって予定があるんだから文句言わないの」と、お姉さん的なメッセージを入れて、みんなやっと落ち着いた。  明後日の朝、僕が図書館に行ってくると行って出かけたら、姉はどうするんだろう。うちに来たみんなに何て言うんだろう。みんなはどう思うんだろう。  みんながどう思うかは、お姉ちゃんが何て言うか次第か。  ちょっと怖いな。  でもそれでも、少しでも早く耀くんに会いたい。  ずっと誰かと一緒にいる、もどかしい状態になるうちじゃなくて、少しでも2人になれる耀くんの家で。

ともだちにシェアしよう!