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第58話
ーーおはよう、碧。明日の最終の便で帰ることになったよ。明後日には会えるかな。
翌朝、目覚ましのアラームより少し早い時刻に、メッセージの着信音が聞こえた気がした。
ぼんやりとスマホを開いて、一気に目が覚めた。
明日の最終便。
会えるのは明後日。
長い 遠い
でも期限が切られてる方が、あてもなく待つよりはいい。
今日も入れて2日間。どうやって過ごそうか。
今日はたぶん、午前中からみんなが来る。
一緒にいれば気が紛れるのか、それとも余計に耀くんがいないことを淋しく感じるのか。
ベッドの上にむくりと起き上がって、カレンダーを見た。
たった2日
ほんの2日
なんて長い、2日間
ーーーおはよう、耀くん。連絡ありがとう。明後日、遠いよ。
許されたのをいいことに朝っぱらから甘えてみる。
ーーごめんな。長いよな。
予想通りの慰めの言葉をもらって安心する。
ーーー本、たぶん今日読み終わるよ。耀くんは?
ーーこっち来る機内で読み終わったよ。祖母の面会の時間まで、もう後は勉強するしかない。
そのヒマの潰し方はちょっとやだな。
ーーーきっとみんな耀くんに質問のメッセージ入れるよ。
ーーああ、それもあったな。
早く会いたい。
それしか浮かんでこなくてメッセージが続かない。
ーー碧、明後日、図書館行こう。
わ
ーーーうん。いく。
帰ってきた次の日。2人で会える。
ーーでもね、母はその日まで休みだから家には母がいる。どうする? 買い物ぐらいは行くかもしれないけど。でも碧の家に行くよりは2人の時間は持てると思うよ。
ーーーうん、それでいい。うち来たら2人は無理だし。
うちに来たら、耀くんはみんなの耀くんになる。僕のだけど、僕のじゃなくなる。
それはやだ。
ーー分かった。時間とかはまた後で決めよう。
ーーーうん。楽しみ。
ーー俺も碧に早く会いたい。
その一文を、長いこと眺めていた。スマホの画面がパッと消えて、ようやく自分がメッセージを見つめたまま固まっていたことに気付いた。
朝食を終えて片付けて、部屋に戻るとスマホが鳴った。
グループの方に耀くんからのメッセージ。
ーー明日の夜に帰るから、明明後日には顔を出すよ。
すぐにまたピロリンと着信音。
ーー明後日じゃないの?
お姉ちゃんだ。
ーー明後日は用があるから。
その耀くんの返信に何人かが不満を漏らしていたけれど、さっちゃんが「耀ちゃんにだって予定があるんだから文句言わないの」と、お姉さん的なメッセージを入れて、みんなやっと落ち着いた。
明後日の朝、僕が図書館に行ってくると行って出かけたら、姉はどうするんだろう。うちに来たみんなに何て言うんだろう。みんなはどう思うんだろう。
みんながどう思うかは、お姉ちゃんが何て言うか次第か。
ちょっと怖いな。
でもそれでも、少しでも早く耀くんに会いたい。
ずっと誰かと一緒にいる、もどかしい状態になるうちじゃなくて、少しでも2人になれる耀くんの家で。
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