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第100話
母と2人でゆっくり朝ご飯を食べて、「他2人起きてこないね」なんて言って、洗濯物を干すのを手伝った。チョコレートを口に放り込みながら、まだかな、と時計を見た時スマホが震えた。
大急ぎでポケットからスマホを出して画面を見た。
耀くん!
ーーおはよう、碧。2人が出掛けたから迎えに行ってもいい?
ーーーうん
スタンプを選ぶ、とかそんな余裕ない。ほどなくして返信。
ーーOK
耀くん来るっ
この前は夜だったから待ってたけど、今日は明るいから家を出てもいいよね?
ポケットにスマホとサイフを入れて、タオルを掴んで部屋を出た。
「お母さん、出かけてくるからっ」
キッチンの母に声をかけて玄関に向かう。
「あら、どこまで?」
キッチンから母が顔を出した。一瞬迷って、
「よ、耀くん家…っ」
と、スニーカーを履きながら応えた。
「そう、気を付けてね。行ってらっしゃい」
「いってきますっっ」
別に悪いことをしてるわけじゃないけど、変なドキドキが混ざってくる。
家を出て、耀くん家の方向に小走りで進むと耀くんが角を曲がってくるのが見えた。
僕に気付いて微笑む。
すっごい綺麗
ちょっと周りを見回して、誰もいなかったから飛び付いた。
「碧! おはよ。待ちきれなかった?」
僕を抱きとめた耀くんに、笑みを含んだ声で訊かれた。
「お、おはよー、耀くん。だって…」
早く会いたくて、の気持ちを込めて耀くんを見上げた。耀くんは眩しそうに僕を見た。
「碧がそうやって俺の方に走ってくるの、めちゃくちゃ幸せな気持ちになる」
うっとりするような綺麗な笑みでそう言うと、耀くんは僕の肩に手を回した。
「コンビニ寄るよ。今日は誰もいないから食べる物買っとかないと」
「あ、耀くん、エコバッグ忘れたっ」
俺が持ってるから大丈夫、と頭を撫でられた。
今日この後、自分が物を食べる気になるのかとか全然分からないまま、サンドイッチとジャスミンティを買った。
コンビニを出て、他愛ない話をしながら耀くん家のマンションまで歩いて、エレベーターに乗った。エレベーターの中で指を絡めて手を繋いで、ドアが開いても誰もいないのをいいことにそのまま耀くん家の部屋まで歩いた。
耀くんが少し乱暴に鍵を挿してドアを開ける。
引き摺り込まれるように家の中に入った。
やや重く閉まってくるマンションのドアを片手で引いて閉めながら、耀くんはもう一方の手で僕を抱きしめる。ドアにエコバッグが当たって、ゴツンと音がした。
僕の背後でガチャガチャと鍵の締まる音がして、ぎゅうっと抱きしめられた。
心臓が壊れそうなほど脈打ってる。
頬を撫でられて上を向くと、耀くんと目が合った。それだけで身体が熱くなってくる。
「碧…」
呼びかけられて目を閉じた。
唇が重なって身体が震えた。何度も角度を変えながら啄むようなキスをして、時々唇を舐められる。耀くんにしがみついて唇を開いた。
昨日はお預けにされた深いキス。唇の端をちろりと舐められてぞくぞくした。
耀くんの舌、コーヒーの味がする。
舌を絡め合うキスは久しぶりで、頭の中がじんじんしてくる。息が上がってきたころ、耀くんが唇を離した。
「…碧の舌は甘いな」
そんなことを言って、にやりと笑った。
「おいで、碧」
手を引かれて、スニーカーを脱いだ。
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