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第107話

 初めて耀くんに抱かれた後、家のお風呂場の鏡を見て驚いた。  思ったより目立つ、赤い痕。  記憶にないのも何ヵ所もあった。  この全部に、耀くんが口付けたんだ  そう思うとまた胸が高鳴った。  すっごいマーキングされてる  重だるい身体のあちこちに付けられた所有の印を指で辿りながら、耀くんの独占欲にくらくらした。  僕は、ちょっと怖いぐらい愛されてる 「碧さー、今日歩くの遅くない?」 「そ、そうかな」  つい、隣を歩く敬也から目を逸らした。月曜の放課後の帰り道。 「土曜日の疲れが抜けてないのかも」  と、ちょっと苦しい言い訳をする。 「あー、文化祭すごかったもんなー。でもオレ的には水瀬先輩にメイド服着てほしかった。執事もめっちゃ似合ってたけどさ」 「あはは。敬也たちが行った時はちゃんと執事っぽく接客してくれたの?」 「全然」  やっぱり?と笑い合いながら電車に乗った。 「今日ってさ」  と敬也が言った時、2人のスマホが同時に震えた。ポケットから出して画面を見る。 ーー本日、水瀬家通常営業です。あたし休みだけど。さっちゃん来てるよ。 「そっか。水瀬先輩たちは代休なのか」 「そうそう、休み。朝僕が出る時まだ寝てたもん、お姉ちゃん」  あ  スマホが震えた。  咄嗟に敬也に見られないように画面を手元に傾ける。 ーー碧、学校終わった?  耀くん。 ーーーうん。今電車、敬也と。 ーー了解。  耀くん、うち来るのかな。 「谷崎先輩ってさ」 「え?」  びくっとして敬也を見た。 「うちの学校でも人気あんの知ってたけど、でもちょっとすごかったな、今日」 「あ…うん…」  土曜日の文化祭で谷崎耀が連れ歩いてた水瀬碧を見に、いつもの何倍もの生徒がうちのクラスの前を行き来してた。 「今日、ありがとね、敬也」 「いや。それは別に」  気にすんな、と敬也が言う。  敬也はさりげなく僕を廊下からの視線から守ってくれた。 「そのうち、てか、すぐにみんな次の話題にいくだろうし。それに昨日、水瀬先輩に電話で頼まれてっから」 「え? お姉ちゃんに?」  敬也は頬を赤く染めて頷いた。 「びっくりした。電話、初めてかかってきて。登録してあってもかかってくることなんてないと思ってたからさ。水瀬先輩が「碧に何かあったらよろしく」って「あたしたちは、耀ちゃんが碧に構うのは普通だけど、とにかく耀ちゃんは目立つから」って言ってた」 「そっ…か…」  お姉ちゃんがそんなこと… 「でもなんかさ、頼られるっていいな」  敬也が照れくさそうにへへっと笑った。  文化祭の時、依くんにも僕のこと頼まれてたけど、やっぱりそれとは全然違うんだろうなと思った。  最寄駅に着いて2人で電車を下りた。その間も、えりちゃんや啓吾から「じゃ、行こっかなー」とかのメッセージがきていた。  改札を抜けて階段を降りていると、  あ  

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