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「ここからの夕日、本当にきれいですね」  手すりにもたれて感嘆する陽斗と乾杯して、ビールをごくごく飲む。仕事終わりのビールは最高だ。昼間は暑かったし、しかも今日は陽斗がいて泊まってくれる。  一気に喉を滑り落ちる苦みを楽しみながら横を見ると、陽斗はハッとしたように急いで目をそらした。 「どうした?」 「いえ、何でもないです」  ほわっと赤くなるから、ついからかいたくなってしまう。 「夕日より見とれちゃうくらい、俺っていい男?」 「はい」  間髪入れずに返事が返ってきて、大倉は目を瞬いた。それを見た陽斗がますます焦った顔になり「あ、いえ、その」と続けた。 「あの、一気に飲んでるのが、男らしくてカッコいいなと思って」  耳まで真っ赤になりながらそんなことを言うから大倉は笑った。 「その程度でカッコいいと思ってもらえるなら喜んで飲むよ」  手を伸ばして髪を撫でると、陽斗はぴょこんと背筋を伸ばした。いやそんな緊張しなくても。  典型的日本人の陽斗はスキンシップに不慣れだ。人馴れしていない猫でも撫でているような気持ちで髪に指をくぐらせる。 「陽斗、キスしていい?」  名前を呼んだせいか、陽斗がぱぱっと赤くなった。かわいいなあ。 「え……あの、はい」  後頭部をそっと押して顔を向けさせ、キスをした。反射的にぎゅっと閉じた唇を舌先でなぞると、びくっと肩が揺れて、陽斗の動揺が伝わってくる。もう一度舌でつつくと、ゆるやかにほころんで大倉を受け入れた。  怖がらせないように、そっと舌を差し入れて誘いかける。おずおずとした反応がとても初々しくて、その反応を楽しみたい気持ちと、もっといろいろと試したいもどかしさを同時に味わう。 「陽斗はかわいいな」  ささやいて、舌でたわむれあいながら缶をテーブルに置くと陽斗の体を抱きしめた。  細身の体は頼りない。仕事のストレスでかなり痩せたそうで元々はもっと体重はあったらしい。  日本で何があったかよく知らないが、ここでの生活で元気になったらいいと思う。 「んっ……ふ……」  息継ぎがうまくできない陽斗は、深いキスになると息が上がってしまう。 「も、だめ、です」  ビールを持ったままの手で弱く押し返されて、大倉は素直に身を引いた。焦らなくても夜は長いし、明日は嵐で家におこもりだ。

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