10 / 12

3-1

 スーパーで買い物する間、陽斗はドキドキが治まらなかった。大倉の部屋に遊びに行くのは、あの告白以来、初めてだ。  つき合おうと告白されてOKしたものの、夢のような展開に現実感がまったくない。  大倉は自分のどこを気に入ったんだろう? 顔も頭も普通だし、人より目立つところはどこにもない。見た目にわからなくても、文才に優れているとか絵や音楽が得意だとかいうこともない。  それに比べて大倉は顔もいいし背も180センチあるし、ダイビングで鍛えた体はついうっとり眺めてしまうほどカッコいい。しかも親切で優しくて、語学もできるし料理もうまい。  こんな完璧な人が、自分の彼氏!  絶対にドッキリだと思ったのにそうではないらしい。 「晩ごはんは魚にしようか。朝ごはんは何がいい?」  大倉が料理じょうずなことは何度か家におじゃまして知っている。 「えーと、いつもはパンとかシリアルとか……」  料理ができないので部屋にあるのは調理のいらないものばかりだ。昼は学食で、夜は屋台で適当に買って食べている。 「じゃあ朝はパンと卵とソーセージだな。あ、これおすすめ」  大きなガラス瓶のパッケージが英語じゃないことくらいはわかったが、オイルの中に黒と緑のつぶつぶがたくさん入っている。それが何か見当もつかない。 「何ですか、これ?」 「刻んだオリーブだよ」  首をかしげた陽斗を見て、大倉が説明を加えた。 「オリーブオイルに刻んだニンニクとオリーブとスパイスが入ってるんだ。パンに塗って溶けるチーズ乗せて焼いてもいいし、フライパンにこれ入れて肉とか野菜とか炒めてハーブソルト振るだけでもおいしくなる」 「へえ、便利そうですね。買っておきます」  炒めるだけなら陽斗にも何とかできそうな気がする。ハーブソルトも買おう。 「こうしてると一緒に暮らしてるみたいだな」  ドキドキしているところにそんなことを言われて、陽斗の心臓はますます早くなる。こっそり妄想したのがバレた?  でも見上げた横顔は楽しそうで、その笑顔にさらに気持ちが浮き立った。

ともだちにシェアしよう!