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ちゅっと耳元にキスされて、焦って口を開いた。
「あ、あの、文化祭では浴衣、着るそうです」
「へえ。陽斗の浴衣、見たいな」
「えっ?」
「着るんだろ?」
「いえ、学生に着せる予定なので」
「なんだ、残念」
「あ、でも太鼓って浴衣でも叩けますか?」
「もちろん。袖を襷(たすき)でまとめておけば問題ないよ」
さっきから大倉がいたずらな指であちこち触るので、陽斗はうろたえて目線をきょろきょろさせている。こういう時はどこを見てたらいいんだ?
映画のストーリーはもうよくわからない。でも構わない。映画よりも現実のストーリーのほうが大事だから。
ただ困るのは、現実は自分の予想を超えて、大倉があまい雰囲気を出すことだ。
「陽斗はかわいいな」
耳元でささやかれて、陽斗は「ぎゃーーーーー」と叫びたくなる。そんなことを言うのは大倉が初めてで、背中がむずむずとむずがゆい。
でもここで「かわいくないです」と否定するのはせっかく言ってくれた大倉に悪い気がするし、「はい」とか「ありがとう」なんてことも言えない。なので、落ち着かない気分で黙りこんでしまう。
「真っ赤になって照れるのも、本当にかわいい」
あーーーーーーーーーーーーー!
耳をふさいで床を転げまわりたい。
みんなはこういう時、どんな対応をしてるんだ? 大倉の目がおかしいことを指摘したほうがいい?
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