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「どうしてこんなことをするんですか?」と一度、訊いたことがある。彼は虫けらでも見るような目つきで「気に入らないに理由があるか?」と平然と答えた。
その返事に絶望した。
改善点が見つからなかったからだ。自分に非があれば改めることもできる。
でも彼は「気に入らない」だけで、こんなことをしているのだ。
部署移動を願い出れば聞いてもらえるんだろうか。そんな望みを持って上司に訊ねてみたが「お前みたいなそそっかしい奴を欲しがる部署があるか」とこき下ろされた。
上司は完全に先輩社員の言い分を信じていて、陽斗を使えない足手まといだと断定していたのだ。
そんな環境で必死に頑張っても事態は好転せず、逆に頑張れば頑張るほど先輩社員の嫌がらせはひどくなった。
年末に帰省した実家で「痩せすぎだ」「大丈夫なのか」と家族に心配され、年明けに職場で倒れたことで退職を決めた。
「体や心を壊してまで仕事する必要なんかない」と病院に駆け付けた両親が言ってくれたことでようやく決心がついたのだ。
退職届を出したその足で何となく入った喫茶店で「日本語教師募集中」というポスターを目にしたのは、どんな神様のいたずらだったのか。
「美しい自然と豊かな時間がここにはある」というキャッチコピーとともに、海と空の鮮やかな青が目に焼きついた。
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