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7-1
翌朝、陽斗が目を覚ました時、大倉は椅子に座ってパソコンを開いていた。
「おはよう、体はどう? つらくない?」
ごく普通の口調で尋ねられて、ぶわっと一気に昨夜のことを思い出す。ベッドにやって来た大倉の顔を見られなくて、思わず布団に顔を伏せた。
「すごい。顔、一瞬で真っ赤になったよ」
楽しげに言った大倉の手が顎にかかり、そっと顔をあげられた。
うれしそうな口元がにまにましていて、陽斗は困って唇を尖らせる。
「そんな顔されたら怒れなくなります」
「あー、かわいいよなー」
くしゃくしゃと犬を撫でるみたいに髪を撫でられた。
「陽斗はホントにかわいいよ。大好きだよ」
頭を抱え込むように髪をわしゃわしゃされて、ちゅっちゅっと頬にもおでこにもキスされる。やっぱり犬扱いかもしれない。
「昨日はありがとう。すごく気持ちよかった」
ストレートな言葉に陽斗は心臓を撃ち抜かれた気分でこくこくとうなずく。
「陽斗は?」
言葉をねだられて、恥ずかしくてなかなか愛情を言葉にできない典型的日本人の陽斗は何とか「ぼ、ぼくも、です」と口にした。大倉はにやにやしている。
「ありがと」
ちゅっと音をたてて頬にキスをされた。
こういう仕草にもまだ慣れないけれど、心の中がふわふわしてとてもうれしい。
「あれ? その写真って」
写真の整理をしていたのか、パソコン画面には大きめのアイコンがずらりと並んでいた。
「ああ、こっちに来たばっかの頃に撮った写真。島のあちこち撮りまくってたな」
「これ、修二さんが撮ったの?」
空と海の青さが際立つ一枚を、陽斗は指差した。手前にエメラルドグリーンの海とその向こうに白い砂浜のビーチ、抜けるような青空に白い雲が広がっている写真だ。
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