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27 ウサギの気持ち、大人の本音

「先生…っ、怖かった…!」 「──伊勢、もう大丈夫だ。……俺がついてる。俺が守ってやる」  俺はもっと理性的で、分別のある大人だと思っていた。  こんな熱い感情は知らない。たくさんの人の目も気にならない。伊勢を誰にも触らせたくなくて、両腕の中に閉じ込める。 「…先生…、先生…っ」  しがみつく伊勢が可愛い。安心しきって体を預けてくる、ウサギが愛しい。  その想いだけで腕の力は強くなる。  いかつい顔をした駅員たちが痴漢の男を連行していく。野次馬が集まり、ホームは俄かに騒然となった。事情聴取に呼ばれるまで、俺は伊勢を抱き締めて離さなかった。 「伊勢、毎朝電車の中で俺を見ていたのは、お前か?」 「…うん。先生、やっと僕を見付けてくれたね」  満員電車の中で先生に恋をした。小さな声で、伊勢はそう告白した。  あの視線の犯人。熱い眼差しで俺を見ていたのは伊勢。腕の中で幸せそうに笑っているウサギだ。 「信じて── 。先生が好き」 「この野郎。信じる他ないだろ。……ずるいよ、お前は。大事なことは先に言え」  ぴったりと寄り添った伊勢の体が、俺の囁きに呼応するように、急激に熱を帯びてゆく。  固くなった伊勢の下肢を感じて、俺の体もおかしくなる。 「お前に反応した。大きくなった」  コートの中に伊勢を迎え入れて、強く彼の腰を抱く。  大人がウサギに本気になった。それを認めるのは簡単だ。膨らんだ下肢を伊勢に擦り付けて、お前と同じだよ、と囁いてやればいい。 「教えたよな。男はどうして屹つのかって」 「──うん」 「お前が好きだ。もう、降参だ」  伊勢が俺を想うように、俺も彼が好きだ。 「今日もコートを着ててよかった」 「…先生、もっと…、もっとぎゅってして」  先生――。自分の気持ちに白旗を振った後は、その呼び名がほろ苦く聞こえる。  伊勢の願いを叶えてやるには、俺はとても窮屈な人間だ。 「我慢しろ。もう少しだけ、俺を常識人でいさせてくれ」  ただの男になって、伊勢を思い切り甘えさせてやりたい。  人で溢れた駅のホームでなく二人きりになれる場所で。  頭を撫でて、指を齧らせて、ウサギが感じたいだけ感じさせてやろう…

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