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31 ウサギとの恋 3

「僕…子供じゃないよ…」  もっとして、と伊勢はジーンズの前を開けて、しどけない格好のまま腰をせり上げた。  その姿に誘われて手の動きが早くなる。水滴が跳ねるような音が、狭いマンションの玄関に響く。 「──もう19歳になった…から…っ」  抑え切れなくなったのか、伊勢はドアを指でかき毟って、喉声で言った。 「好きな人に…、たくさん触ってほしい」 「伊勢」 「先生が好き。僕を恋人にしてください」  先に言われてしまった。返事をする代わりに伊勢の瞼を噛んでやる。  伊勢の目許から目尻に舌を這わせて、髪の生え際を辿って、耳を犯す。 「孝成(こうせい)がいいな。恋人に呼んでもらうなら」  鼓膜へとそう吹き込むと、掌の中で伊勢は弾けた。 「…孝成…っ」  甘い悲鳴だ。  伊勢が自分の名前を呼んでいる。掌に遠慮なく白濁を撒き散らして、膝を震わせて。 「敏感だな」 「はっ…、あ…」 「もっと見せろ」 「あ…っ、ああっ」  服の汚れなんか気にしていられない。玄関タイルに膝立ちになって、いったばかりの伊勢を口に含む。  苦い性の味。伊勢の青い匂い。 「孝成…、こう、せい」  飴の逆だ。舐めるごとに大きくなる。噛んでみても吸ってみても、伊勢は小さくならない。  好きな相手なら、男の性器もたやすく口に入れられる。滲み出てきた先端の雫も、伊勢の一部だから、飲みたいと思う。 (…まいってる。こいつに、完全に)  気持ちいいことを何でもしてやりたい。舌の動きひとつで腰をくねらせる伊勢。敏感に愛撫に応えながら、あどけない顔で自分を狂わせる男。  伊勢に出会うために、俺は今まで恋人を作らなかったのかもしれない。ロマンティックなその想像と、リアリズムに舌の上で脈打つ屹立が、俺の中で綯交ぜになっている。 「満員電車の中で──僕はこんな風に孝成を見てた」  おぼつかない手が自分の髪をかき回す。  子供が大人を見上げる距離。その向こうに伊勢の顔がある。

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