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33 ウサギとの恋 5
「──孝成にもう一度会えた時、神様にもありがとうって言ったよ」
「伊勢…」
「毎朝あの電車で孝成を見てた」
乗客に揉みくちゃにされながら、伊勢は俺を見詰めていたのだ。
汗をかくような熱い視線で。俺のことだけを。
「予備校が同じなんて、夢みたいだった。神様は僕に優しい」
早く気付けばよかった。こんなに近くで俺を想ってくれていたのに、長い間、伊勢を一人きりにしてしまった。
「言わなきゃ分からないだろ…っ。ずっと視線を感じてた。お前を探していたんだ。電車でも予備校でも、いくらでも話す機会はあったじゃないか」
「だって…、そんな勇気ない」
「どうして」
「…孝成の顔を見るだけで…、僕、変になってたから。どきどきして、…胸が痛くて。痴漢に間違われた時は、もう終わりだって思った。でも…孝成は許してくれて、また、胸が痛くなって……」
「伊勢」
「孝成が好きだから、…今もどきどきする」
まるで伝染したかのように、俺の心音も早くなる。
言葉も気持ちも体に追いつかない。胸の高鳴りが暴走する。
「そういうの、初恋って言うんだぞ」
伊勢は赤い顔で頷きを返した。ぶる、と身を震わせながら。
「孝成…、キスして。続き、して…っ」
いやらしい懇願だ。
何にも染まっていなかった伊勢にこんなことを言わせる、俺は悪い人間だ。
呼吸を混ぜるような濃厚なキスをして、開いていたジーンズの前に顔を埋める。
天を向いている伊勢を唇であやし、充血した裏筋を指で撫で、その下のふたつの膨らみまで舌で捏ねてゆく。
「んっ…あぁ…っ!」
「いい子だ。がまんするな」
「嫌いにならないで…っ。孝成に恥ずかしいとこばっかり見られてる…」
「伊勢、俺の前なら、おかしくなってもいいんだ。お前が感じてるの、最高にいい」
こんな27歳の大人の上目遣いでも、伊勢には官能的に映ったらしい。
薄い繁みから覗いた伊勢の目が、欲情しきって潤っている。
「好き…っ、孝成、あっ、あっ…!」
ぱた、と顔のそばで何かが迸った。
頬に熱い滑りを感じる。伊勢の精液が頬から顎へと流れていく。
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