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34 ウサギとの恋 6
「──たまらないな、お前を見てると」
ウサギの恋は、はらはらするほど幼くて、それでいて火に飛び込むように鮮烈だ。
「大人だって恋に落ちたら捨て身なんだぞ」
弛緩した伊勢を両腕に抱いて、寝室のベッドへ運ぶ。
横たえたその体に飛びかかり、乱暴にジーンズを剥ぎ取って、自分の顎についていた精液を拭った。
「孝成──」
力のない彼の膝を開いて、白く滑った指先をその奥へあてがう。
「お前とひとつになりたい。意味が分かるか?」
伊勢を抱きたい。欲しくてたまらない。
「うん…っ」
無邪気な返事だ。教育者のはしくれだった俺の、最後の理性が立ち塞がる。
「指よりもっと大きいのが入るんだぞ」
「うん──」
「お前を壊すかもしれないぞ。大人を本気にさせたこと、きっと後悔する」
伊勢を半分脅しながら、自分自身にストップをかけている。
裏腹に伸びてゆく指先は、彼の狭い窄まりをくぐって、少しずつ中へと侵入している。
「…ん…う…っ」
「怖いんだろ?」
「入って…くる」
「嫌がれ。逃げろよ。伊勢」
中指の付け根まで、伊勢の中に埋まった。肌の上よりも熱い温度を感じる。爪の先に、漣のように震える内側を感じる。
ここに自分を沈めて、思うさま伊勢を啼かせてみたい。
大人の欲望がどんなに激しいかめちゃくちゃにして分からせてやりたい。
「孝成…っ、孝成」
止めなくてはいけない激情だ。指を食む柔らかさに酔いながら、怖くて怖くてしかたない。
「──ください」
「伊勢」
「僕に孝成をください。──誕生日のプレゼントに、孝成をください」
欲のない伊勢。こんな凶暴な大人が欲しいと言う。
「こんな奴でいいのか」
「他はいらない」
「俺は止めたぞ。バカ野郎」
噛み千切るように伊勢の唇を奪って、彼の奥深くへ埋めた指を、湿った音とともに引き抜いた。
「ふっ…、うっ、うん…っ」
鼻に抜ける伊勢の声が俺を誘惑する。理性が弾け飛ぶ。
「好きだ。伊勢」
優しくしたいのに、両手が彼のシャツを破いている。シーツの上に飛んだボタンを伊勢も自分ももう見ていない。
平らな胸。指で挟むより感じさせたくて、小さな突起を唇で弄った。心臓に耳をあてると伊勢の激しい鼓動が聞こえる。彼の上で、俺の胸も苦しくなっている。
「あっ、…ああっ」
伊勢の声はどうしてこんなに甘いんだろう。
もっと聞きたい。部屋中をこの声でいっぱいにしてほしい。
「…孝成…っ」
ベッドを埋める、伊勢の服だったもの。ただの布に変わったそれらの上で、伊勢の足を開く。指を飲み込んでいたそこに今度は舌を這わせた。
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