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第17話 3回目のヒート・R18
レンチン食品で昼飯を済ませ、布団でゴロゴロしていたらブワッと体が火照り汗がタラリと流れた。
ヒートが来た。
体を縮め丸くなる。呼吸に集中し早くなった鼓動を落ち着かせ、動悸が納まってくると、頭がぼーっとしてちょっとムラっとしてくる。
この段階ではまだヌケないのは前回学んだ。中学生で使っていたエロい女の画像では興奮できないので、自身が半勃ちするまでは待った方がいい。ジャージの上からゆるく刺激しながらムラムラが溜まるのを待って、パンツに手を入れたくなってきた頃がタイミングだ。
どうせ、手を洗うんだから今回はトイレで処理しようとユニットバスへ向かう。
十分に我慢したおかげで自分の手だけですぐに終わらせられた。フィニッシュをトイレットペーパーで受け止めなかったので手がベトベトになったが、ユニットバスの良いところはトイレと洗面、風呂に壁と扉がないところだよな。と半脱ぎのパンツを蹴飛ばし、下半身裸になって手を洗う。
ふと、洗面台の端の黒い布に目が行った。
「何だこれ?」と、手にとると、ふわぁ~っとフェロモンが広がってはじめて「酒田のインナーだ!!」と思い出した。
賢者タイムで落ち着くはずの発熱と動悸が激しくなる。手放さなければならないのに、手には力が入るばかり。足から力が抜け、へたり込みそうなのを必死に堪える。
ふわり、ふわり、とフェロモンが鼻腔をそっとかすめ慶介の自我を撫で崩していく。
(あかん、これはあかんて。はぅ・・・ぁ、ふぅ・・・あ、)
内股がわずかに震え、アソコが反応して立ち上がり始めた。腹の奥がジワリと濡れた感覚がしたら・・・。
そこから先は耐えられなかった。
インナーを鼻に押し当てフスフスと匂いを嗅ぐ。ドキドキが止まらない。ヒートの初期症状で起こる発熱発汗の動悸とは違う。期待に満ちた、この先にある歓喜に胸が踊るような興奮で頭がいっぱいになった。
「はぁ、はぁ、はぁあ・・・、・・・あ、」
熱く血の集まったそれに触れる自分の手はひやりとした。まだ冷たい手で握りたくなくて、指だけでコシコシと刺激するとゾクゾクする。物足りないと感じたら、握っていたインナーを思い出してまた鼻にあてる。
腰砕けになった。冷たい床にペタンとへたり込み、床の冷たさも手の冷たさも忘れて夢中になってしごきビクビクッと体を震わせた。
・・・・・・気持ちいい・・・。
白濁の汚れを見下ろしながら放心する。
こんなの知ってしまったら、もう戻れない。
床の汚れをトイレットペーパーで拭きながら、慶介はちょっと困惑していた。体の内側がふるふると震えている。それもイッたあとの気持ち良い余韻がじわーっと残り続けているのだ。
脱力で完全に動けなくなる前に布団に戻らなければ、と思い出して慌てて布団に戻ると体は溶けるように脱力した。快感の気持ちいいではなく、満たされた喜びのような、嬉しいという感情で脳がフワフワする。
とろりと落ちたまぶたに逆らわず、幸せな気分に浸ったまま、慶介は睡りに落ちた。
目が覚めた。スマホを見たら酒田から「水分補給を忘れずに」とメッセージが来ていたので、のそのそとペットボトルの水を取りに行く。
一息つくとパンツを履いていない事を思い出し、酒田に指定されたヒート中の服が3LのTシャツだった理由を理解した。前回はダボダボなのが嫌で、途中から普段着のTシャツにしたんだっけ? ふふふ、と笑う。
「いや、ふふふって、何? 俺オカシイままか?」
オカシクなったを元凶をなんとかせねば! と思うけど、もう手遅れなのも理解している。
布団に持ち込んで寝てしまったので、もはや布団からも酒田のフェロモンを感じる。またそれが、ベッドに誘われているような錯覚をおこして、布団にくるまれば匂いに包まれ、ぬくもりまで感じる事になり、甘い誘惑として慶介の頭を揺すってくる。
コレに抗い続けるなんて、無理・・・。
「大切なのは、薬を飲むこと。水を飲むこと。・・・ヒート中の性欲は・・・無理に・・・押さえなくて、良い、やんな?」
フェロモンに誘われるように布団に潜り込むと匂いに包まれて力が抜ける。もっと包まれたくて、黒のインナーを抱えて布団をかぶると霧散していたフェロモンがギュッと詰まって、まるでフェロモンの水に潜ったような感覚がする。匂いを逃したくなくて小さな隙間から酸素を吸いながら浸り続けた。
次第に性欲が高まってきて切なくなってきた。まだ兆していないソコを包むように押さえて、フェロモンを感じながら、時々撫でると、刺激が甘く、柔らかく、たまらなく気持ちがいい。
少し硬くなってくると手に収まらないから両手でシコシコふにふにと弄り、情けなくも股を広げて性欲に素直に従う。
フェロモンが薄くなってきたなと思って、インナーに鼻を埋めると、脳裏がチカチカと瞬いて背中にビリッと電気が走り、熱が下腹部に集まり張り詰めた。
触ってくれとソコがピクピクと揺れて、そこに伸びる指も興奮とちょっぴりの怖さで震えていた。
大人しくなれ、となで付けるように手の平で擦ったら気持ちよさで腰がビクビクと揺れた。
「はあぁんん・・・っ! はっ、はっ、・・・ああぁ、ヤバいぃ・・・」
快感が強すぎて手が引けちゃったけど、先っぽとかもう一回撫でて欲しい。今ならヌメリ気が増えたからもっと気持ちいいはず・・・。
欲望に支配された脳が命ずるままに手を動かし、快感の強さが声に現れ、艷声が溢れ出た。握り込んだソコを押さえてもなお、2度3度と、腰が跳ね達する。
乱れた息を整え、塗れた手を見た。「今までの人生で一番、気持ちよかった」と気怠い体を起こしてウェットティッシュで後始末をした。
パタリと倒れ込んだ近くに黒のインナーがあって、うっかり匂いを吸い込んでしまう。賢者タイムが甘い余韻に塗り替えられて腹のなかがキュゥと疼いた。
男の徴ではない場所が刺激を求めていた。どうしたら良いのか解らなくて、腹を押したり足の付根を撫でたりするが、ソコじゃないと切なく訴えられた。
ふと思い出して、蟻の門渡りと言われるあまり触れたことのない徴の先に指を伸ばす。たどるように指先を添わせ体の反応を探った。クンと釣れた反応あたりに指を沈めると、ああぁ、と声が漏れた。もっともっと、と脳が暴れだす。繰り返し指を押し沈め、新たな快感にハマった。
雑になった指の動きがズルっと滑り、ぬるりとした感触を捉えた。
(ここは・・・!)
ベータにとっては不浄の場所。
いや、アルファもオメガもにとってもそうだ。
ただ、男のオメガだけが別の意味を持つ場所。
縁はツルツルとして中から滲み出たヌメリで触る指先も気持ちがいい。滲み出るヌメリは先っぽから出てくるものより粘度が高くヌチャリとしている。
好奇心から指を立てたが、それを奥に進めるのは怖くなって止めた。
ココを知るには、まだ心の準備ができていない。
(フェロモンでもいっぱいいっぱいなのに!)
黒のインナーを鼻に押し付け好奇心を追い払った。
腹の奥が疼く度に伸びる指を噛み、乱暴に男の徴を扱いて耐えた。
欲に翻弄される熱はシェルターを開く2日前まで続き、熱が収まって我に返った慶介はなんとかして恥の痕跡を消そうと、掃除と片付け、洗面台でできる洗濯などの証拠隠滅に奔走した。
「おつかれ。・・・疲れた顔してんな」
「あ・・・、うん、ちょっと、キツかった」
「後片付けしとくから、リビングで寝てろ。重岡さんもいるから、腹減ってるなら頼めばいいし」
「うん・・・」
***
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