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第12話 Ωの自覚

「それとも泣けないほどの威嚇のほうがいいか?」  ノアール殿下の低い声が僕の鼓膜をも震え上がらせた。得体の知れない雰囲気なのに無表情のままというのが恐ろしい。造形美がすぎると恐怖に繋がるのだと初めて知った。 「十分威嚇しているじゃないか。やれやれ、本気だったとはな」 「何がだ」 「こちらのΩ王子のことだよ。初めて連れ込んだΩが男だと聞いたときは耳を疑ったが、どうやら間違いじゃなかったみたいだな」  降参するように両手を軽く上げたヴィオレッティ殿下が振り返った。それを見たノアール殿下が眉をひそめたのは、ヴィオレッティ殿下が妙な笑みを浮かべているからだろう。 「どういうことだ?」 「やっとαらしくなってきたなと思って嬉し涙が出そうだって話だ。あぁ、そういう意味では泣かされたということになるか」 「ふざけるな」 「ふざけてなどないさ。おまえのことは気に入らないが、もっとも優秀なαであるおまえにはこの国の未来がかかっている。αの王として頂点に君臨してもらわないと面倒なことになるんだよ。しかも俺まで巻き込まれかねないなんて冗談じゃない。これまでも何度も忠告してきただろう?」 「……」 「いい加減、腹を括ったらどうなんだ?」  ヴィオレッティ殿下がどういう表情をしているのか、残念ながら僕からは見えない。だが、国を憂う者としてまっとうなことを話しているように聞こえた。  一方、ノアール殿下はますます眉をひそめていた。険しいというほどではないが、何かを考えているといった雰囲気に見える。 「ところでこの王子様だが、こうも自由にさせておくのはどうかと思うぞ?」  ヴィオレッティ殿下が再び僕のほうを見た。そうしてスッと伸ばした指を首筋に近づけてくる。得体の知れない恐怖を思い出した僕は、慌てて後ろに飛び退いた。このとき初めて体が自由に動くことに気がついた。  もしかして、あの熱風のようなもののおかげだろうか。あれは何だったんだと考えていると、「ヴィオ」という鋭い声が聞こえて肩がブルッと震えた。 「おっと、触れてはいないからな?」  ヴィオレッティ殿下の手が離れたことにホッとし、脂汗の流れる首筋を指でそっと拭う。 「そんなに心配なら首飾りでも贈ってやればいいだろう。いくら男のΩと言っても、首を晒したままなんてどうかしているぞ」 「言われなくてもわかっている」 「おまえなりの配慮のつもりなんだろうが、ときにその優しさは命取りになる。すでに接触されていることにも気づいているはずだ」 「……」 「それにな、こちらの王子様は何もわかっていないんじゃないのか? 危機感が乏しいにも程がある。あとはおまえが教えてやるんだな。これでも俺は愛する妃二人の相手をするのに忙しいんだ」 「それなら僕にちょっかいをかけるな!」と言いたかったが、ノアール殿下の手前、さすがに口にするわけにはいかない。そんな僕に「Ωなんだからもっと気をつけるんだな」とヴィオレッティ殿下が笑いかけてきた。 「俺は優しいからこの程度で済んだが、αが本気を出せばもっとひどい目にあうぞ?」 (それをあなたが言いますか!)  そう思ってキッと睨んだ僕に、再びニヤッと笑ったヴィオレッティ殿下がヒラヒラと手を振りながら部屋を出て行った。「一体なんだったんだ」と思いながらノアール殿下に視線を移すと、眉を寄せながら何か考え込んでいる。邪魔をしてはいけないと思ったが無言で部屋を出て行くわけにもいかない。 「ありがとうございました。それに、申し訳ありません」 「何への謝罪だ」 「今回の件は僕の落ち度です。今後は気をつけるようにします」 「気をつけたところで、ヴィオレッティが言ったとおりαが本気を出せばΩである貴殿は何もできない。αの威嚇に晒されたΩはαの所有物にされるしかない」  そういえばヴィオレッティ殿下も同じことを言っていた。それにしても威嚇とは何のことだろうか。そう思って「あの、威嚇とは……?」と尋ねた僕に、ノアール殿下はなぜか大きなため息をついた。 「とりあえず部屋に戻ろう」  そう言った殿下と部屋に戻った僕は、紅茶を前に殿下と向かい合わせに座っている。いつもと変わらないように見える殿下だが、おそらく機嫌はあまりよくない。 「αのことはどの程度知っている?」 「ごく一般的なことくらいでしょうか」  僕が知っているのは圧倒的に優れた才能と肉体を持っていること、それに“生ませる性”ということくらいだ。国ではΩの本ばかり調べていたため、αのことはほとんど知らない。 「なるほど。最近Ωになった貴殿ならそれも仕方がないことか。αは威嚇という力を持っている。先ほど貴殿がヴィオレッティから向けられたのが、その威嚇だ」 「あれが……」  得体の知れない恐怖に背中がゾクッとした。 「威嚇を向けられたΩはαからは絶対に逃れられない。それがΩというものだ。わかったら、今後不用意にαには近づかないことだ」 「僕もそう思いました。というより、身に染みて実感しました」  今回はノアール殿下が現れたからよかったものの、誰もいないところで同じ目に遭っていたら間違いなく僕はどうにかされていただろう。 (これじゃあ、まるで姫君のようだな)  いや、Ωのこともαのこともわかっていない僕は、姫君よりも無防備な状態だったに違いない。 「それからもう一つ、覚えておくべきことがある」 「はい、何でしょうか」  身を正して殿下を見つめると、黒い瞳がほんの少し揺れたような気がした。 「Ωはαに首を噛まれることで、噛んだαの所有物になる」 「首を噛まれることがですか? あ、いえ、噛むという話は聞いたことがありますが」 「やはり知らなかったのだな」  僕の返事に殿下が腑に落ちたというような声を出した。 「どうりで首を晒したままだったわけだ。男として思うところがあってのことかと思っていたが……。いや、そもそも男であってもΩなのだから隠すのが当然か」 「首を噛むのは、それほど重要なのですか?」 「αがΩの首を噛むことで、一般で言うところの婚姻が成立する」  まさかそんな婚姻の方法があったとは。これではますます珍獣のように思えてくる。 「それで、所有物というのは……」  首を噛んで婚姻するのなら、なぜ所有物という言い方をするのだろうか。 「Ωは、自分を噛んだαとしか閨を共にできなくなる。もしほかの誰か、たとえα以外の相手であっても拒絶反応を示し、ひどいときには錯乱することさえある」 「……何と言うか、強烈な婚姻関係ですね」  そうとしか言い様がなかった。Ωになったばかりの僕は「なんだそりゃ」と言いたくなる内容が、たしかに“所有物”と表現できる事象かもしれない。 「Ωにとっては噛んだαが唯一の相手となる。だが、αは何人ものΩを噛むことが可能だ」 「は?」 「つまり、αはΩを何人でも所有できるということだ」 「それはまた、」  えげつない関係性だ。なるほど、ヴィオレッティ殿下が言っていたことがようやく理解できた。 (ついでに、僕をその所有物の一人にしようとしていたこともわかった)  もし噛まれていたら……想像するだけでゾッとする。やはりヴィオレッティ殿下はとんでもない人だなと思いながら、二度と近づかないようにしようと固く決意した。同時に、姫君たちの格好にも納得できた。 「なるほど、それで姫君たちは同じような首飾りをしているのですね」  初めて見たときは、真っ黒なだけの首飾りをお揃いで着けているのが不思議だった。しかし、あれは自分の身を守るための必需品だったのだ。  だとすると、Ωなのに首を晒している僕は「噛んでいいですよ」と言っているに等しい。それがΩにとって何を意味するのか、真実を知りゾッとする。 「知らなかったとはいえ、あまりにも無防備すぎました」 「いや、初対面のときに気づいていながら確認しなかったわたしにも責任がある。それに、貴殿なら普通のΩと違う行動を取るかもしれないと思い込んでいた」 「あー……変わったΩで、重ね重ね申し訳ありません」 「いや、いい。そういう貴殿だから……」  なぜか殿下の言葉がピタリと止まった。そうして僕に向けられていた視線がスッと逸らされる。どうしたのだろうと見つめていると、軽く咳払いをした殿下が再び僕を見た。 「ところで、首飾りはどうする?」 「そうですね……やはり着けたほうがよいのでしょうね」 「万が一ということもあるからな。本来後宮にいる限りは安心なんだが……いや、そうとも言い切れないか」 「殿下?」 「これは醜聞になるのだが、以前、不逞の輩に後宮への侵入を許したことがある。そのとき数名の妃候補が狙われたが、ヴィオレッティが気づいて事なきを得た」 「ヴィオレッティ殿下が……」 「あの男は他のαの気配に敏いんだ。従兄弟たちの中では、わたしに次いで能力が高いαだと言われている。それなのに満足に才能を発揮しようとしない困った男だ」 「そうでしたか」  それほどの人物なのに、なぜ僕を襲ってまでノアール殿下の不興を買おうとしたのだろうか。二人は仲が悪いのかとも思ったが、「困った男だ」と言う殿下の声に刺々しいものは感じられない。 「そういえば、救出されたうち二人の姫はヴィオの妃になっていたな」  そういう経緯だったのか。それなら乗り換えたというよりも、姫君がヴィオレッティ殿下に惚れて妃になったということじゃないか。 (それなのに、なぜあんな言い方をしたんだろう)  照れ隠し……とは思えない。あの性格で自分の手柄を謙遜したりはしないだろう。  意図も思惑も僕にはわからないが、今回の件ではヴィオレッティ殿下に礼を言うべきかもしれない。やり方はいただけなかったが、おかげで自分がΩだということをようやく自覚できた。 「そういうことなら、やはり僕も首飾りをしておくべきでしょうね」 「そうだな。……そうか、それなら貴殿がデザインしてはどうだ?」 「え?」 「首飾りのデザインをしてみたいと思わないか?」 「そう、ですね。たしかに興味は引かれますが」  服飾のデザインをしたことはないが、母上が真剣に図案を描いている姿を見るたびにおもしろそうだと思っていた。もしやってもいいのなら、ぜひ挑戦してみたい。 「絵画とは違うかもしれないが、貴殿ならきっとできる」  殿下の言葉に胸がくすぐったくなった。それに、そこまで言われてやらない選択肢はない。 「ぜひやらせてください」 「では、さっそく見本になるものを用意しよう。あぁ、完成品が届くまでは後宮で使っている首飾りでもかまわないか?」 「はい、かまいません」 「見本の首飾りと紙と……他に必要なものはあるか?」 「そうですね。使われている素材の一覧があれば、そちらも」 「手配しよう」  未知なる挑戦に気持ちが昂ぶってきた。それに殿下も心なしか楽しそうに見える。 (こういう人が伴侶なら結婚生活は楽しいだろうな……って、僕は何を)  自然とそう思った自分に驚いた。 (いや、一応妃候補なのだから可能性がないわけではないんだが)  妃候補が三十人近くいる中で、小国の王子でしかない僕が妃の一人に選ばれる確率は低いだろう。子ができれば別だろうが、いまのところその気配はない。つまり、僕はいまだに崖っぷちに立ったままということだ。 (発情したからといって安心していては駄目か)  こうして殿下と過ごす時間が増えても、子ができなければ意味がない。このままではいずれ後宮を出ることになる。それなら早く次の嫁ぎ先を考えたほうがいい。  わかっているのに、「次の嫁ぎ先」と考えるだけで胸がちくちくした。痛みの原因はわからないが、それを感じたくなくてつい目を逸らしてしまう。 (僕は国のために嫁がなければならないんだぞ)  何のためにビジュオール王国まで来たのか忘れてはいけない。余計なことは考えないようにしなくては。そうしなければ、僕はきっと次に踏み出せなくなる。  そう気を引き締め直しながら、首飾りのデザインについて殿下と話を続けた。  僕はいま、後宮から出てノアール殿下の執務室へと向かっている。本来、妃候補の一人にしかすぎない僕が執務室に出入りするのはよくない。しかし、殿下に「ここなら安心して絵が描けるだろう」と勧められて断ることはできなかった。執務室から見える景色の美しさに魅せられて描きたくなったという気持ちもある。  ヴィオレッティ殿下の一件の後も、後宮を出ることを禁じられることはなかった。殿下いわく「貴殿から絵を描く自由を奪いたくない」ということらしいが、もしかして気を遣ってくれているのだろうか。 「到着したときはこんなふうになるとは思わなかったな」  初対面のとき以外、部屋に来ることも呼ばれることもなかったから僕に興味がないのだとばかり思っていた。しかし、殿下が絵画に興味を持ってくれたおかげで発情することができた。一度だけとは言え閨を共にすることもできたし、絵を描き続けることもできている。 「あとは子ができるかだが……もしかして、Ωの懐妊は普通の女性とは違うんだろうか」  画材を持っていない左手を自分のお腹にそっと当てた。いまのところ子ができているような様子はない。殿下に聞いた話だと発情したΩはほぼ確実に子ができるということらしいが、もしかして男のΩは違うのだろうか。 「となると、今後もどうなるかわからないな」  ふと、初日に言われた「貴殿がいつまでの滞在になるかはわからないが」という言葉を思い出した。どういう意味だったのか確認できないままだが、子ができなければお払い箱という意味だとしたら残された時間はあまりないように思える。 「……考えたところで仕方がない。取りあえず体調を崩さないためにもスケッチだけは続けよう」  右手に持つスケッチブックと木炭箱をしっかりと抱え直す。それにしても……と、首に吸いつくような首飾りを左手で撫でた。これは首飾りが完成するまでの臨時にと殿下にもらったΩ用の首飾りだ。  手触りは柔らかいが、ナイフで切ろうとしても切れないほど頑丈に作られているのだという。そのくらい丈夫でなければ、本気を出したαの歯からは首を守れないのだと聞いた。 「男のΩよりも、そんな獣じみたαのほうがよほど珍獣のような気がする」  しかし、それがαという生き物なのだ。それならΩの僕は首飾りをつけて身を守るしかない。 「それにしても黒一色というのはどうなんだろうな。せめて色だけでももう少し増やしたいところだが、飾りっ気がないのも残念なんだよなぁ」  僕は、ただの護身用でしかない現状のデザインに憂いていた。これでは“首飾り”なんて呼べたものじゃない。  好きにデザインしてもよいと殿下に許可をいただいた僕は、まず黒色以外が作れないか職人に尋ねることから始めた。昨日の報告では他の色にも染められるかもしれないそうで、ビーズやカラーストーンを付ける方法も見つかりそうだと聞いている。  見た目はそれで十分改善できるだろう。あとは留め具にも装飾を施したいところだが、ここが一番難しい部分でもあった。 「簡単に外れる留め具では問題があるし、かといってただ留めるだけというのも味気ないしな」  いくら首飾りを頑丈にしても、簡単に外れる留め具では意味がない。せっかくならしっかり留められる状態で、かつデザイン性に富んだものを作りたい。そうすれば護身用としてだけでなく装飾品として楽しむこともできるはずだ。 「そうか。留め具の種類を増やせばいいのか」  ビジュオール王国で使われているΩの首飾りには一種類の留め具しかない。種類を増やし留め具自体にこだわりを持たせれば、デザイン性も上がるだろう。 「よし、留め具職人に話してみるか」  いい考えに頬を緩ませながら角を曲がりかけたところで、後ろから「ランシュ殿」と声をかけられた。 「ルジャン殿下」  振り返ると、ルジャン殿下の姿が見えた。 「絵の道具を持っているということは、あの池へ行くのですか?」 「いえ、庭ではなくノアール殿下の執務室へ行くところです」 「殿下の執務室に?」  ルジャン殿下が眉をひそめたが、それもそうだろう。僕は妃候補であって官僚でも侍従でもない。おそらく「どういうことだ?」と思ったに違いない。 「いろいろありまして、いまは殿下の執務室の窓から見える景色を描いているのです」 「そうでしたか」 「描くといっても、こうして小さなスケッチブックに木炭で描くだけですが」 「それでも絵を描くことには変わりないでしょう」  僕の言葉にニコッと笑ったルジャン殿下は、不快そうな表情を浮かべることなく画材を見ている。 (やっぱりルジャン殿下も芸術に興味があるんじゃないかな)  鑑賞以外で芸術に興味を持つ従兄弟たちはいないはずだとノアール殿下は話していたが、知らないだけかもしれない。 「それにしても執務室にまで招くとは、よほどのお気に入りなんですね」  不意に聞こえてきた言葉に顔を上げると、ルジャン殿下の黒目がわずかに細くなっていた。そういえば初対面のときにも似たような表情を見たような気がする。「あれは何の話をしているときだったか」と考えていると、「銀細工はお好きですか?」と質問された。 「銀細工、ですか?」 「はい。わたしは大好きでいつも身につけているんですが、身を飾るものだけでなく……こういった筆を飾るものもあるのですよ」  そういって銀色の柄をした絵筆を差し出された。よく見れば細かな模様が入った銀色の筒のようなものが取りつけてある。 「これはまた、なんという贅沢な……」  このような装飾具をつけた絵筆は初めだ。持ちにくいかもしれないが、見て楽しむ絵筆としてはおもしろい。筆は絵を描く道具だと思い込んでいた僕は、目から鱗が落ちるような新鮮さを感じた。 「なんとも興味深い筆です」 「差し上げますよ」 「え? いや、このような珍しいものをいただくわけには」 「わたしが好きな銀細工を褒めていただいたお礼です。それに、ランシュ殿が喜んでくれるのであればわたしも嬉しいですから」  にこりと微笑みながらそう言われてしまっては断りづらい。「では、ありがたく頂戴します」と述べ、銀細工で飾られた筆を手にした。  装飾具のぶんだけ少し重く感じるが、銀の筒に触れると冷たさが心地よかった。指で触れるといかに細かい模様が施されているかがわかる。 「触れると細工の素晴らしさがよりわかります」 「それはよかった。では、次も珍しい銀細工をお持ちしましょう」 「え……?」 「では、また今度」 「あの、ありがとうございます」  頭を下げ、ルジャン殿下の背中をぼんやりと見送った。 「いま、『次も』と言わなかったか?」  それでは会う約束をしたことになりはしないだろうか。偶然の出会いなら仕方がないが、約束したとなると少し困ったことになる。 「ルジャン殿下もαだから、本当はあまり近づきたくないんだがな」  ヴィオレッティ殿下と違い穏やかな雰囲気だからか、そこまで危険な人物には感じない。それでも気をつけるに越したことはないが、どうしたものだろう。 「まぁ、絶対に会うという約束ではないし、社交辞令の一環だったのかもしれないか」  それに、いまは首飾りも着けている。そう思いながら触れた銀細工は心地よい冷たさだったが、なぜか少しだけ違和感を感じて指を離した。

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