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第4話 貸し出し禁止の本

僕は図書室のドアを開けて、鞄を持ったまま一番奥の貸し出し禁止の本棚に一直線に行き、ボロボロの一冊の本を手に取った。 その本のタイトルは『篭の中の果実。』 物語の内容はこうだ。 不思議な果物の篭があって、その篭の中に美味しくない果実を入れると、甘く美味しくなる『禁断の果物の篭』。 ある日その中に同じ果物を入れたいけれど、どちらが先に入れたか分からなくなるのを防ぐために、男は先に入れたかほうに印を付けた。 印を付けることによって先に食べるほうを分かるようにするなんて、この男は頭が良いなぁと僕は思った。 「終業式前にもその本読んでたね」 僕は立ち読みしていたら、急に話しかけられた。 ……誰だろう、そう思いながら僕は本を棚に戻した。 「東雲 蜜柑くん、その『篭の中の果実。』は古くて所々読めないよね?」 三年生の校章を付けていた。 「はい。残念です……読めなくて」 「司書室にね、あるんだよ。新しい『篭の中の果実。』が。透明のカバーを新刊に掛ける手伝いをしてくれたら読ませてあげるから、司書室に来ないかい?」 それは僕にとってとても魅力的な話で、嬉しくて顔が自然と笑顔になってしまった。 「手伝うだけで読ませてもらえるんですか?」 「手伝ってくれる?」 「はい、喜んで!!」 ボロボロの『篭の中の果実。』には愛着はあるけれど……続きが読めるのなら僕は嬉しかった。 僕は案内されるがまま司書室に入った。

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