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第13話 痛み
次の日の朝起きたら、痛かった。
エッチのせいで、腰、けつまんこ、おちんちんが、というわけじゃなくて。
左頬の入れられたタトゥーのキズが痛かった。
コレがあることを見つからないように、消毒をしてからガーゼで隠した。
『果実にキズを付ける行為』は僕を選んでくれた証だから、嬉しかった。
後悔も無い。
ただ、林檎に見付かることだけが異様に怖かった。
林檎から僕に向ける執着心が強過ぎて、少しだけ怖い。
昨日夕飯を食べ終えたあと、『さっきはごめんね』と何度も謝ってきたから、親の前だし聞き流すことは出来なくて『……僕もごめん』と適当に誤魔化したからいけなかった。
それからいつもより激しいスキンシップ、僕に抱き締めたままテレビを見て、トイレの入り口にお風呂場まで付いてきた。
流石にウザくて『入ってきたら、一生口をきかないから』と言ったら、お母さんに笑われて……お父さんに呆れられた。
いつもと同じ仲良し双子兄弟に戻っているように見えてるだろうけど、明らかに林檎の目付きが変わっていた。
それに両親すら気付いていない。
「蜜柑、手繋ごうよ!!」
何故僕が学校登校に手を繋がなくちゃいけないのか。
でも……下校は一緒に出来ない、林檎とはしたくない。
「……今日だけだから」
「俺は毎日蜜柑に求めるつもりだよ?」
……朝は僕に決定権はない。
もし拒んだら無理矢理にでも林檎は僕と一緒にいるつもりだろうから。
「蜜柑くん、おはよう」
昨日、僕の左頬にタトゥーを入れた委員長が僕を見付けてくれて、挨拶してくれた。
「委員長、おはようございます」
この人が、今日僕に快楽をくれる。
僕を『甘い果実にしてくれる』人。
「蜜柑、この先輩は誰?」
「君が東雲 林檎くんか」
委員長は僕にニコリと笑って、『また放課後』と肩を軽く叩いた。
「蜜柑?」
林檎の見たこともないような冷たい表情は、『通常鏡に映る僕』のようで、嫌な気分になった。
『この顔』が『僕の通常』なんだ。
「図書委員の委員長。林檎には一生縁がないよ」
「そうだといいなぁ……」
林檎は本当に嫌そうな顔で言ってきた。
林檎と、部長に委員長。
ずっと無縁であって欲しい。
そのまま僕を、僕だけを『選んで』ください。
「でも蜜柑があの人と仲良くするなら、俺も仲良くしなきゃね」
「しないで!!」
僕は繋いでいた手を放して、林檎の腕を引っ張って上に上げた。
「?っみかん、痛い」
咄嗟に僕は林檎に乱暴をしていた。
まさか僕が我を忘れるくらい、取り乱すなんて。
居場所を盗られると思ったら、本当に冷静さを忘れていた。
僕は林檎の腕を放して、
「ごめん……」
謝るしか出来なかった。
「ううん、大丈夫。俺こそごめんね、蜜柑にも友達がいるんだよね」
そうだよ。
林檎にも僕が知らない友達がいるはずだ。
だから僕は僕にしかない場所を探して、『選ばれた果実』になりたいのかもしれない。
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