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第22.5話 ※柊斗目線★★

 ――蕩けるような感覚が唇から広がり、欲情をかき立てる。  それが夢ではなく現実だと気がついた時、反射的に突き飛ばしてしまった。  凌がテーブルに頭を打ちつけて、床に倒れる。 「わ、わりぃ、大丈夫か?」  痛みを感じていないのか……オレを見上げて、艶然と微笑んだ。  心配だが、気にかけている場合じゃない。早く離れないと――。 「寝室に戻れよ」 「なんで? ねぇ柊斗、ぼく……柊斗にくっつきたい」  甘えた声で、正面からオレの首に腕を回す。 「ダメだ、戻ってくれ」 「好きなんだ、ずっと好きで……ねぇ、我慢できない」 「ダ…んっ、っ」  凌がオレの唇を喰む。  くらくらした。フェロモンにあてられて、めまいがするほどこいつが欲しい。今すぐに貪りたい。股間ははち切れんばかりに大きく硬く反り返り、欲望をぶちまけたいと熱くなっている。  誤算だった。  完全に想定外だった。  番持ちΩのフェロモンに反応してしまうαやβが、ごく稀にいるというのは聞いたことがある。だが、番以外のαに欲情するΩの話は聞いたことがない。だから自分さえ気をつければ大丈夫だと思っていたのだ。それなのに、こいつの方から来るとはーー。 「おねがい、僕に触れてよ」  オレの左手をとり、卑猥な音をたてて指をしゃぶる。自身の昂りを直接愛撫されているかのような錯覚に陥った。  理性の糸は、そこでぷつりと切れた。  拒否反応で泣き言を言われても、もう知らない。騙されて傷つけられて、そんな姿は見ていられないから……オレが全て忘れさせてやる。  抗えないほどに高揚したオレは、くるりと体勢を逆転させて凌を見下ろした。 「後悔すんなよ」  そのまま唇に喰らいつき、舌をねじりこませ、絡める。快楽に身を任せると、あっという間にオレ達は蕩けていった。 「ぁっ……っ」  Tシャツをたくし上げて腹に舌を這わせる。凌は必死に口元を押さえた。我慢しきれず漏らした声に、たまらなく興奮する。やがて辿り着いたそこを舐めては吸い上げ、指でこねくり回し、執拗に攻め続けた。ツンと尖り立ったそれに触れる度、凌が甘い声でオレを煽る。 「腰、動いてるけど?」  わざと耳を舐めながら囁く。もちろん、胸元の手を休めることもない。 「だっ、だって、っ……あっ、んっっ……」  耳から首筋へと、舐めながらゆっくりと降りてくる。反応が可愛くて、思わず吸い付いた。 「んあっ、っぁ……」  凌が腰を揺すって強請るので、下着とハーフパンツを一気に剥ぎ取ってやる。勃起したそれが可愛くぴょこんと飛び出す。それを見たらオレも我慢が出来なくなり、素早く自身のモノを取り出した。裏筋を合わせて一緒に握り込むと、お互いの熱を感じて笑みが溢れる。軽く擦り合わせただけで、やばいくらい気持ち良かった。 「んっ、し、しゅ…う……きもち、いっ……」  涙を溢しながら喘ぐ凌の蕩けきった顔を見ると、ぞくぞくと背筋が粟立つ。  手の動きを早めると、凌はオレの腕を掴んだ。 「だめっ、イっ…んっっ……」 「ん? どうした?」  意地悪に聞き返してみたが、オレも限界が近い。あちこちにキスを落としながら、更に手の動きを早めていった。 「ね、ぁっ…イっ、いっちゃ……っ」 「り、凌っ……」 「んっ、んんーっ!」  凌がイクのとほぼ同じタイミングで、オレも吐精した。  潤む瞳が愛しくて、頬に手を寄せる。凌は幸せそうにすりすりと甘えた。顔にまで飛んでいた白濁をぐりぐりと親指でいじると、凌は躊躇うことなくその親指を口に含む。  エロい。  凌を自分だけのものにしたい。湧き上がる欲望に突き動かされて、もう片方の手を後孔へと向かわせた。背中を撫でながら、ゆっくりと、ゆっくりと、近づいていく。  辿り着いた蕾を優しく撫でると、凌はびくんと腰を反らせた。 「しゅうとぉ……」  そんな声で名前を呼ばれたら、余裕がなくなってしまう。本当はじっくり時間をかけてやりたいのに……一気に2本の指を挿れると、凌がオレの背中に腕を回し、しがみついた。 「あ、っぁ……あ」  グチュグチュと卑猥な音をたてて掻き混ぜる。キツいと感じた筈の後孔は、すぐにぐずぐずになった。 「入れるぞ」 「うん、、ぃ…っん……っ」  勃ちっぱなしのそれを、後孔へとあてがう。そして挿入すると同時に、唇を重ねた。  唇が塞がれて声が出せない分、感度が上がっているのだろうか。中が熱い昂りを、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。  凌は身体を震わせて、声にならない吐息を何度も漏らした。 「しっ、しゅうっ…きもちい……」  腰を打ちつける度、いやらしい音が響いた。 「すごい音だな」 「や、やだっ、はずかしぃ…んっ……ぁ」  恥ずかしいと言って、手で顔を隠す。そんな仕草にもそそられる。もっと恥ずかしいことをさせたら、どんな顔をするのだろうか。  色んなこいつを見たいと思った。 「しゅうとっ……きもち、ぃ…ああっ」  腰を動かしつつ、凌のモノも緩く扱く。 「や、あ……っだめ、またイ、くっ…」 「……すっげぇ可愛い」 「んっ、んんっ…、あっああぁぁっ」  凌が涙をぼろぼろ溢しながら精を吐き出す。ビクビクと身体を震わせた後、くたりとソファに沈んだ。  荒い息を繰り返しながら休む凌の脇を抱えて、起き上がらせる。向かい合わせで膝の上に乗せて、そのまま下から突き上げた。 「ま、まって、イッたばっ……ぁ!」  無視をして続ける。  座位は快感がより深まったように感じるのは気のせいだろうか。喘ぎながら必死に抱きついてくる凌を見ると、気のせいじゃないように感じる。 「しゅぅ…こ、これすごっ…っぁ……」  目の前にある、胸元の敏感な突起を舐める。凌は頭を振って喘いだ。 「好きだ……っ」  つい、口から溢れる。 「っ、すごく好きだ」  後頭部に手を回し、唇を塞ぐ。凌はん、ん、と声を漏らしながらも、必死に舌を絡めてきた。  凌が自ら腰を振る。オレは気が狂いそうなほどの快楽の渦に飲まれながら、何度も好きだと囁いた。 「ぼくもすき、だいすきっ…っ、んっ、あぁぁああ」 「……っ!」  締め付けが一段と強まり、思わず声を漏らす。そして、強く抱き合いながら一緒に果てた。  2人でどさりと横になる。しばらく繋がったまま、見つめ合った。  凌の顔は涙や唾液、汗、白い蜜でドロドロだった。それがたまらなく愛しくて、軽く手で拭い、また口づける。  奪いたい。  幸せにしてやりたい。  オレは一生1人でいいと思っていた。誰かを幸せにするなんて、そして自分が幸せになるなんて、そんなの別世界の話だと思っていた。  だけど今、こいつとずっと一緒にいたいと願わずにいられない。  凌を強く抱きしめる。  発情期が落ち着いたら、こいつは今日のことを後悔するのだろうか――。  胸が苦しかった。

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