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21 レセプションパーティー 1
脩一は最年少の役員として精力的に職務をこなした。
堂本専務の昼食会に頻繁に参加し、一般の社員たちから百貨店業務の実務を学んだ。
それと同時に重役どうしのゴルフや接待にも付き合い、銀行マンらしい資産運用の私塾なども開いて、人柄と明晰さで急速に社内の求心力を高めていった。
彼と再会して一ケ月が過ぎた頃、財界に大きな動きがあった。
国際的シェアを持つ自動車会社どうしの合併が成功し、そのレセプションパーティに社長共々招待されたのだ。
都内の有名ホテルのバンケットルームに、今夜は財界人たちがたくさん集まっている。
出席者は業種を越える人も多く、時には重鎮と呼ばれる人も現れる。
商業地の再開発や大規模な住宅地の建設に携わる独立行政法人、都市再生機構のトップもその一人だ。
「理人、こちらは都市再生機構の小野田 理事長だ。ご挨拶しなさい」
「初めまして。秘書をしております、新庄理人と申します」
「おお、噂の息子というのは彼か。これはまた…、男にしておくのは実に惜しい」
好色そうに顎を撫でて、初老のその人は俺を見た。
粘着質の視線を体のパーツのあちこちに浴びる。
今までも男から性的な目で見られたことはあったが、服の下まで覗かれたような気分になったのは初めてだ。
「日頃より父が大変お世話になっております。今後ともよろしくお願い申し上げます」
握手をした後も、理事長は俺の手の甲や指を撫でて離そうとしない。
都市再生機構は大新百貨店が出店を希望している赤坂アーバンビレッジの開発元だ。
ここで理事長の機嫌を損ねる訳にはいかない。
「銀座の女たちが嫉妬するような白い手だな。君、酒はいけるかね?」
「はい。嗜むほどですが」
「君を膝元に置いて手ずから飲ませてみたいものだ。しっぽりとな」
「……私でよろしければ、ぜひお誘いくださいませ。理事長」
やっと手を離してもらって曖昧な微笑みで答える。
解放されたのも束の間、すぐにまた次の出席者と名刺交換が始まった。
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