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22 レセプションパーティー 2
社交の場に出ると、俺は新庄家の一人息子として扱われる。
社長の添え物になって愛想を振り撒くのは気疲れする仕事だ。
「ごぶさたしております、新庄社長」
「葛西 頭取。このたびはおめでとうございます」
このパーティーの影の主催者、東亜銀行の葛西伸晃 頭取が人垣の向こうから現れた。
メガバンクの代表として財界に圧倒的な影響力を持っている人だ。
「今回の合併劇は頭取の功績だともっぱらの報道だ。またあなたの名声が上がりましたな」
「いやいや。私は調印式に出席しただけですよ。両社の海外法人の合併が軌道に乗って、国内も追随する形になりました」
ウェイターが社長と頭取のグラスにシャンパンを注ぐ。
アルコールに強くない俺は、カシスソーダを作ってもらった。
「乾杯は今暫くお待ちを。主役がまだです」
「主役ですと?」
「私的なジョークですよ。先行の海外法人の合併を手掛けた部下です。いや、元とつけるべきでしょうか」
その時、辺りが急にざわついた。
歓談していた出席者たちの一角が、よく目立つ長身の男のために通路を空けている。
「ああ、やっとお出ましだ。大新百貨店さんで服のセンスを磨いたかな?」
人々の注目を浴びながらこちらへ歩いてくる彼。
華やいだドレススーツとタイがよく似合う、まさしく主役の出で立ちだ。
(脩一――?)
凡百な周囲の雰囲気とはまるで違う。
彼にだけライトがあたっているかのように、シルエットがきらきらと輝いている。
「遅くなって申し訳ありません。5分前まで昼寝をしていました」
「紅林、久々に会った挨拶がそれか。この男は薄情でしてね。帰国後すぐにそちらに出向して、以来一度もうちの銀行に顔を出してくれないのです」
「頭取の茶飲み相手は他にいらっしゃるでしょう。これでも私は、慣れない役員を押し付けられて四苦八苦しているんですよ」
「まったく、大新さんの居心地がいいくせに口の悪い奴だ。新庄社長、この跳ね返りを厳しく教育してやってください」
頭取と脩一はとても親しい様子だった。
互いに慣れたやり取りを見て、社長も驚いている。
「随分と紅林君に信頼を置かれているようですな」
「ええ。彼の有言実行を気に入っています。ニューヨーク支店でよく揉まれた。今後は国内に留まって活躍してくれるはずです」
脩一はウェイターが運んできたトレーの上から、ノンアルコールのペリエを取った。
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