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41 決着

「解任動議だと!?」  会社に不利益を与えた人間は、たとえ社長でも辞めさせることができる。  取締役会でその旨を要請し、株主総会の承認を得ればいい。 「筆頭株主の我が東亜銀行は、総会はまだかと手ぐすね引いて待っていますよ」  激昂した社長とは正反対に、脩一はデスクに凭れて優雅に構えた。  アタッシュケースの中の札束をひとつ取って、うちわのように扇いでいる。 「あなたは取締役会の意向を無視し、赤坂アーバンビレッジに固執して資金を投じ過ぎた。そのくせフタを開ければ他社に先を越されるという失態まで演じた。この損失をどう埋めるおつもりです?」 「き…貴様…っ」 「役員たちはあなたのワンマン体質に不信と不満を募らせている。贈賄疑惑は致命的です。この手帳と取引明細の内容を、今朝、役員全員にリークしました」 「何だと――」 「個人口座を使って会社の金を流用する、実に古典的な方法だ。親族を監査役に選んだのも裏目に出ましたね。重役会議室はあなた方の釈明を求める声で紛糾しているでしょう」  呆然としている俺のそばで、けたたましくインターフォンが鳴った。  受話器を取ったのは脩一だった。 「はい、社長室。――はい、伝えます」  脩一は受話器を元に戻すと、社長を見詰めて淡々と言った。 「たった今、堂本専務よりあなたと監査役三名の解任請求が出されました」  社長は発作を起こしたように頭を掻き毟った。  整えていたセットが乱れて、一瞬のうちに社長は権威を失った。 「……貴様――」 「さあ、早く釈明に行かれてください。ぐずぐずしていると採決されますよ」 「――ああ。行くとも。これに証言させる」  社長は大股で俺に近付き、乱暴にスーツの襟を掴んだ。

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