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45 16年分のキス
「しゅうちゃん」
「理人」
「大好き――」
夕暮れの茜色に頬を染めてキスをする。
柔らかく唇が合わさって、食むようにその感触を味わってから、ゆっくりと舌先を触れ合わせる。
脩一としかキスをしたことがないことを、俺はとても幸せだと思った。
「ん…っ、ふ…ん――」
巧みに動く彼の舌が、少しずつ俺の呼吸を熱くしていく。
懸命に脩一について行こうとして、とうてい敵わないキスの深さに降参した。
「――理人。お前が欲しくてたまらなかった。お前に会いたくて、抱き締めたくて、でも、お前は夢の中にしかいなかった」
ひんやりとしたシーツが俺の背中を受け止める。
見上げると、脩一の真剣な顔が目の前にあった。
「お前にキスをする夢、たくさん見たよ。もっと…いけないことも」
「しゅうちゃん――」
「理人のことをどんな風に好きか、大人になってから気付いた。――もう一度会うのが、少し怖かった」
脩一はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外した。
長い指が弾いたシャツのボタンの隙間から、滑らかな筋肉のついた胸が見える。
「空手、今もしてるんだね」
鍛えたその胸に指を伸ばして、つう、とトルソーの肌を撫でてみた。
かすかに脩一は身を震わせて、16年前にはなかった、大人の色気を纏った眼差しで俺を見た。
「理人がどれくらい大きくなったか、見たいな」
「…うん。脱がせ…て」
「うんと小さい頃、着替えるの下手くそだったもんな」
脩一の両手が、一人でパジャマも着られなかったあの頃のように、優しい手つきで服を脱がせてくれる。
しゅる、しゅる、と布地が肌を滑るたび、言い知れない戦慄きが体の奥に生まれて、目を開けていられなくなった。
最後に彼は、左腕の時計を外して、俺を一糸纏わぬ姿にした。
脩一の視線を感じて、恥ずかしい。
部屋の空気に曝されていた肌に、しっとりと濡れた彼の唇が触れる。
首筋から鎖骨、肩の先、そして胸へとキスは下りていって、敏感な先端を甘噛みされた。
「はぁ…っ」
吐息か声か分からない。俺が上げたそれを、脩一は何度も聞きたがった。
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