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翠鳳さま

「現代と平安時代の美意識はまるで違う。いいか、りん。平安時代での美人の基準は、切れ長の細い目 、キメの細かい白い肌 、ふっくらした頬 、サラサラした艶のある黒髪 、体型もふくよか 、大きな顔 、鼻筋が通った小さな鼻 、おしとやかな口(おちょぼ口) 。竜神いわくもう少し待てば運命の相手との出会いがあると。それまで奢らず謙虚に務めを果たせだと。菫はほら、昨日翠鳳の右隣にいた女だ。何日か前に都から女を浚ってきてそのまま妻にしたらしいぞ」 白鬼丸がそう教えてくれた。 「それってれっきとした犯罪じゃあ……」 「それがこの時代では普通だ。誰も翠鳳を咎めることが出来ない。現代とは違う。翠鳳のいうことを大人しく聞いていた方が身のためだ」 驚くことばかりで頭が追い付かなかった。 「俺の女にしてやってもいいんだが、抱き心地がなぁ、いまいちなんだよな……」 翠鳳さまがうんうんと唸った末、 「そうだ。こうしよう。今からりんは俺の娘な。俺の娘なら他のあやかしどももそう簡単には手を出させない。俺ら鬼を敵に回すことになるからな。そうと決まれば家に案内する」 一夫多妻が当たり前の時代。多くの妻を持つということはすなわち権力を誇示すること。だから翠鳳さまにも妻が何人もいるみたいだった。でも子どもは一人。名前は青丹さま。すでに成人して天狗や烏天狗が住む黒谷集落と呼ばれる山に住んでいると教えてくれた。

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