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翠鳳さま
「住めば都。踏み荒らされても日陰でも花はどんな環境でも咲く。だからどんなに辛くても耐えて。いつかきっと満開の花が咲くっておばあちゃんがよく言っていた。都会暮らしはもう疲れた。母さんも再婚相手も迅もみんな僕を田舎者と馬鹿にするし、訛りも直せって言うし、あの家には僕の居場所は最初からなかった。ビクビクして顔色を伺いながら息を殺して生きるなんてもう嫌なんだ。東京と違ってここは生まれ育った福島に似てる。山や川や田んぼを見ると安心するんだ。僕はここで生きていく」
「乗りかかった船だ。とことん付き合うよ」
「ありがとう白鬼丸」
こうしてここでの僕の生活がはじまった。
「俺の娘のりんと、りんの守役の白鬼丸だ。皆の衆宜しく頼む」
翠鳳さまが里に住むあやかしを広場みたいなところに一堂に集め僕と白鬼丸を紹介してくれた。
突然のことにみなあっぱぐちを開けてきょとんとしていた。
「りんは竜神の巫女としてここに来たばかりだ。何も知らん。だから教えてやってくれ」
「皆さんはじめまして、りんです。白鬼丸ともども宜しくお願いします」
がちがちに緊張しながらも深々と頭を下げた。
あまりにも僕が痩せているから心配した、狸の耳と尻尾がある近所に住むおばちゃんたちが、
「りんちゃんこれ食べな」
食べ物を持ってきてくれるようになった。
物陰からちらこらと僕を見る小さな影。恥ずかしいのか声を掛けようとすると蜘蛛の子を散らすように逃げてしまう。
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