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翠鳳さま
たまたま偶然川遊びをしていた大学生のグループがいて、その人たちに助けてもらった。もしその人たちがいなかったどうなっていたんだろう。溺れて死んでいたかも知れない。
「りん、無理すんな。俺が行くから大人しく座って待ってろ」
白鬼丸が犬の姿から人型へと変化すると川に勢いよく飛び込んでいった。
バジャーンと大きな水しぶきがあがり子どもたちが大喜びしていた。
「もしかしてきみがりんか?」
静かな低音の品位のある声が背後から聞こえてきて、ドキッとしながら振り向くと子どもくらいの大きな烏が目の前にいたからびっくりした。
「脅かすつもりはなかったんだ。許せ」
烏がゆっくりと人型に変化した。烏のような嘴を持った顔をしていて、左目はビー玉みたいにキラキラと輝いていて、右目には白い布が巻かれてあった。黒光りする大きな羽に覆われていた。
「オレの名は黒檀《こくたん》だ。見ての通り烏天狗だ」
「りんです。宜しくお願いします」
「まさか翠鳳にこんな可愛い娘がいたとはな。天地がひっくり返るとはまさにこのことだな」
ぐいぐいと迫られ思わず後退りした。
「黒檀さん、待って下さい」
あと数センチで間違いなく川に落ちる。恐怖が脳裏を過り体がわなわなと震え出した。
「りんちゃんをいじめちゃだめ!」
「翠鳳さまに言いつけるからね!」
真っ先に気付いたいちくんとにくんが駆け付けてくれた。
「おぃ、変態」
白鬼丸が黒檀さんをじろりと睨み付けた。
「お前が翠鳳の末裔とかいう白鬼丸か?翠鳳の若い頃に瓜二つだな。黒檀だ。宜しく頼むよ」
黒檀さんはどんなに睨まれようがさほど気にすることもなく飄々としていた。
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