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翠鳳さま

「肌身離さず持っているように。そちに何かある時は翠鳳がすぐに助けに行くと申しておる」 「え?翠鳳さまが?」 「鬼はのう一族郎党みな大事にする。娘を助けに行くのは当然のことじゃ。息子は天狗のところに行ったきり戻ってこぬ。文のひとつも寄越さぬ。りん、わらわの側にいてくれるか?」 「はい、翡翠さまと翠鳳さまのお側にいます」 「頼もしいのう」 翡翠さまが優しく微笑んだ。 嘘はついていない。この世界で白鬼丸と一緒に生きていくって決めたんだもの。 「竜神が翠鳳に焼きもちを妬くのも分かる」 翡翠さまが愉しげに笑った。 「りん、わらわに聞きたいことがあるのではないか?顔にそう書いてあるぞ」 不意に聞かれドキっとした。 「舌は抜かぬ。正直に申してみよ」 「えっと、その……」 ぎゅっと手を握り締めた。 「昨夜、白鬼丸が翠鳳さまに都に連れていってもらったんです。僕は熟睡していて白鬼丸がいなかったことにも全く気付かなくて」 「翠鳳が強力な結界を張っているし、浅葱が寝ずの番で警備をしているゆえ不埒な輩が侵入することは困難じゃ」 「白鬼丸が内裏で弟の迅にそっくりの人を見掛けたってそんなことを話していたんです。翡翠さま、僕だけでなく、迅もこの世界に来ているんですか?」 翡翠さまは千里眼だ。勇気を出して聞いてみた。

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