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翠鳳さま

「白鬼丸、子どもたちが怯えているから。怖い顔をしないの」 「しろまる、だめだよ。りんちゃんのいうこときかなきゃ」 「は?誰のせいだよ。てか、いつまでいるんだよ。父ちゃんと母ちゃんが心配するからさっさと家に帰れ」 白鬼丸の機嫌が悪いのは、青丹さまと黒檀さまが家に帰らずずっと居座っているからだった。 「いいかお前たち。一回しか言わないからよく聞け。アイツが目を覚めたとき、目の前に鬼がいたらびっくりするだろう?怪我がまだ治っていないんだ。びっくりして尻餅をついて手を捻ったりしたらどうなる?ずっとここにいるということだろ?狭いところに男ばっか五人。暑苦しいしむさ苦しいし、身動きが取れないし大の字で寝れない」 子どもたちは目を点にして、口をあんぐりと開けて白鬼丸の話しを聞いていた。 「おにさんいるよ」 「あっち」 いちくんとにくんが男性が寝ている隣の部屋を指差した。 「青丹と黒檀に近付くなとあれほど言ったのに。さんたもいねぇし、参ったな」 白鬼丸が大きな欠伸をしながらむくっと体を起こした。 「うぎゃあ~~!でたぁ~~」 「どうやら起きたようだな。思ったより元気そうじゃねぇか」 ドタン、バタンと大きな物音がして、建て壊し寸前のあばら家がギシギシと揺れた。天井からは埃が落ちてきた。 「た、助けてくれ!まだ食われたくない」 男性が四つん這いになりハイハイしながら僕たちのところに逃げてきた。 いちくんたちと目が合い、白鬼丸と目が合い、飛び上がるくらい驚いて、ガタガタと震えながら頭を両手で抱えて突っ伏した。

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