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運命の相手
そのときごろごろと雷鳴が頭上から轟いた。
ピカッと光り、虎みたいな姿が浮かび上がった。ギャアアーーと断末魔の叫び声をあげ、その場に踞る鵺。その声に驚き頼理さまが目を覚ました。
「大丈夫です。動かないで下さい」
白鬼丸が鵺を退治してくれたと、てっきりそう思っていたけど、
「りんさま、大丈夫でございますか?」
白鬼丸でなく、浅葱さんの声が聞こえてきたからビックリした。
「浅葱さん助けてくれてありがとう」
「いいえ、とんでもございません。私は別になにもしていませんよ」
「じゃあ誰が……」
浅葱さんがちらちらと後ろを見た。ごほんごほんとわざとらしい咳払いが聞こえてきた。
「天狗の藤黄さまです。人見知りするとかで、挨拶は後日、改めてと申しておりました」
「頼理さま、ここにいてください」
あわてて縁側に飛び出した。鴇色の羽を大きく広げ月のあかりが煌々と照らす空へと飛び立つ後ろ姿が目に入った。
「藤黄さま、ありがとうございます」
下げられるところまで頭を下げた。
「りんは藤黄と会ったことがあるのか?」
暗闇からぬっと黒檀さまが姿を現したものだから腰を抜かすくらい驚いた。
「驚かせるつもりはなかったんだ。すまん」
「僕の方こそ大きい声を出してすみません。藤黄さまとは一度も会ったことはありません」
解せぬという表情を浮かべる黒檀さま。
「そうか。藤黄はきみを昔から知っている、そんな口振りだったから、おかしいな」
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