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運命の相手
何事も最初が肝心。人見知りが激しいなんて言ってられない。僕に出来る事といったら掃除と炊事くらいだもの。
ひとつ深呼吸してから襖を開けた。
「おはようございます。何かお手伝いさせてください」
「ずいぶんとまぁ早起きだな。そんなに大きな声を出さなくても聞こえる」
「頼理を起こすようになるぞ」
そこにいたのは青丹さまと若い男性と、ここに来てはじめて見る女の人だった。くりくりと肥ったふくよかな女の人だった。
「あれ?たぬ子さん?なんでここに?」
「ごめんなさいね、たぬ子じゃないわよ」
「たぬ子さんに瓜二つだったので、すみません間違えてしまって」
「謝らなくていいわよ。だって同じ化け狸だし。私の名前はキヌ。もしかしてあなたが青丹さまの妹君さまですか?」
「はい。兄がお世話になっています」
ガチガチに緊張しながらもぺこりと頭を下げた。男性のほうは白い烏の姿をしていた藤黄さまだった。凛々しい顔立ちで青丹さまとこうして並ぶ姿は絵になる。
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