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運命の相手
「りんさま、どうか頭を上げてくださいませ。青丹さまに叱れます」
キヌさんに言われ頭を上げると、にっこりと優しく微笑み掛けられた。
「そういえばりんさま、青丹さまはこの頃りんさまの話ししかしないんですよ。藤黄さまがすぐ側にいらっしゃるのにですよ」
「キヌ、余計なことは言わんでいい」
「もしかして照れてらっしゃいますか?」
「そんな訳ないだろ」
湯呑み茶碗を口に運ぶ青丹さま。あちいと漏らすと、ふぅふぅと息を吹きかけてお茶を冷ました。
藤黄さまはそんな青丹さまをケラケラと笑って見ていた。
「雑穀粥、高貴なお方の口に合うかしらね」
「頼理さまは美味しいと仰ってました」
「そりゃあそうです。りんさまが作ってくれたものは格別ですもの」
青丹さまと藤黄さまは仲良くならんで縁側に座り談笑していた。大酒飲みの鬼の倅だ。二日酔いとは無縁だ。藤黄も黒緋も呑める口なのに人前ではほとんど呑まない。そんなことを青丹さまが話していたことをふと思い出した。
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