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運命の相手

「藤黄、曲者だ!」 黒緋さまがどかどかと大股で台所へ入ってきた。 「曲者はほら」 「妹の足元にいる、そいつだろ?」 青丹さまと藤黄さまが同時に人型の紙を指した。 「そうだ。こいつだ。都から運ばれてきた荷物に紛れ込み、屋敷に忍び込んだ」 黒緋さまに睨まれ、思わず後ずさりする式神。 「迅に何を命じられたんだ?逃げてもいいが、俺の問いに答えてからにしたほうが身のためだぞ」 黒緋さまが式神の足の部分を踏みつけた。 「黒緋さま、忍び込んだ式神はこの子ひとりですか?」 「いや、少なくても五体はいた」 「五体もですか?」 頼理さまは雷とあやかしと物の怪が大の苦手だ。 「頼理さまが危ない」 「白鬼丸がいるから大丈夫だ」 「青丹の言う通りだ」 「白鬼丸は頼理さまを怖がらせないようにするため、頼理さまの前では人の姿にはなりません。犬の姿のままでは十分な力を発揮することが出来ません。頼理さまと白鬼丸を助けないと」 「待てりん」 青丹さまには止められたけど、急いで扇子を袖の中にしまい駆け出した。 「頼理さま、白鬼丸」 座敷に入ると、 「りん、助けてくれ!」 半泣き状態で頼理さまが足にぎゅっとしがみついてきた。よほど怖い思いをしたのだろう。恐怖でガタガタと震えていた。 「何かがいるのだ。見えない何かが。白鬼丸が追い払ってくれたのだが、今度は天井から笑い声が聞こえる」 頼理さまが天井を指差した。 白鬼丸も天井を睨み付けていた。そっと見上げると、白鬼丸に追い払われた無数の式神が天井に張り付いていた。

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