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運命の相手

「年の離れた妹は特に可愛いもんな。自慢したくもなるお前の気持ち、よく分かるよ。でもな、たまには焼きもちくらい妬かせてくれ」 「幾らでも妬いたらいい」 「分かった」 嬉しそうに笑う藤黄さま。俄然やる気になったみたいで、宙に浮くと、何やら呪文を唱えながらうちわを天井に向けて扇いだ。 式神たちが蜘蛛の子を散らすように慌てて外へ逃げ出した。逃げた先にあるのは結界。式神たちには見えないのか次から次に勢いよくぶつかり、式神としての力を失い、ひらひらとただの紙になり地面へと落ちていった。 ちょうど庭で焚き火をしていた惣右衛門さん。誰だ散らかしているのはとぶつぶつ言いながら、箒で紙を集めるとすべで燃やしてしまった。 「頼理、式神はいなくなった。いい加減りんから離れろ」 青丹さまがガタガタと震えながら僕にしがみつく頼理さまにやれやれとため息をつきながら声を掛けた。 「だって、天井に」 「藤黄がすべて追い払った。お前に足を掴まれてりんが痛いと言ってるのが分からないのか?りんに嫌われても知らないぞ」 「それだけは絶対に嫌だ」 頼理さまがはっとして顔をあげた。ようやく状況を把握したみたいで慌てて僕の足から離れた。 「りん、すまぬ。痛かっただろ?」 正座ししゅんとして頭を垂れた。 「僕は大丈夫です。頼理さまがご無事でなによりです」 なにげに目が合う頼理さまと藤黄さま。 「もしかしてあなた様があの白い烏の、藤黄殿ですか?」 「あれは仮の姿だ」 「藤黄殿といい、黒緋殿といい、天狗のみなさんは……いえ、なんでもありません」 頼理さまはそこで言葉を止めると、首を横に振った。 黒緋さまは空をじっと見上げていた。

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