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運命の相手

縁側から空を見上げていた黒緋さまが、 「雲行きが怪しいな」 ポツリと呟いた。 「青丹、翠鳳から何か連絡は?」 「いや、ない」 「そうか。藤黄、都の偵察に行っている黒檀からなにか連絡はあったか?」 「そういえばないな」 灰色に染まった空からは今にも雨が降りだしそうだった。 「こうも寒いとまた雪が降るかも知れないな。ここ半月あまりお天道様が顔を出してくれぬ、雨ばかりだと麓に住む民が嘆いていた」 黒緋さまが心配そうに眉を寄せた。 「おおかた政に対する民の不平不満を自分等のせいではなく、俺らあやかしや竜神のせいにして責任逃れをするつもりだろう。はじめに言っておくが、頼理、そなたのことはないからな。くれぐれも誤解をしないでくれ。そなたは青丹の妹の許嫁。いわば身内も同然」 最後のほうは声が小さくてよく聞き取れなかった。それは頼理さまも同じだった。 「藤黄殿、よく聞き取れなかったのでもう一度言ってもえらませんか?」 「二度目はない」 気恥ずかしいのかわざと咳払いをする藤黄さま。ぷいっと顔を逸らした。 垣根の上でカァカァカァと一羽の烏が羽をバタつかせ激しく鳴き出した。 「松明を手にした如木らが橋に火を放ったようだ。如木とは雑色のことだ」 意味が分からずきょとんとしていたら、 「りんには少し難しかったみたいだ。頼理、あとで教えてやれ」 藤黄さまにクスリと笑われてしまった。

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