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運命の相手

「藤黄殿、その如木はもしかして幸人の手の者ですか?」 「十中八九そうだろうな。橋を燃やし、船で川を渡りあやかしの里に攻めいるつもりだろう。鬼に連れ去られた頼理を取り返すため。口ではなんとでも言える」 「藤黄殿お願いです。都に連れて行ってください。私が戻ればいいだけのこと」 「まずはその怪我を治せ。また毒を盛られたらどうする?次こそ命はないぞ。頼むからりんに心配を掛けさせないでくれ」 「藤黄の言う通りだ」 青丹さまが頼理さまを諭した。 「戦の前にご飯にしましょうか」 キヌさんが声が掛けてくれて。みんなで一緒に朝御飯を食べることにした。雑穀粥を頼理さまが食べてくれるかしらと危惧していたキヌさんだったけど取り越し苦労で済んだ。 天狗たちが屋敷に集まってきてぴりぴりと張り詰めた空気が流れていた。みな、口を真一文字に結びその表情は険しかった。 「翡翠様は先の未来が見えるという。だから、りんを儂らのところに寄越した。そうだろ?青丹」 「あぁ、そうだ。ここなら安心とでも思ったのだろうが、幸人の手勢が黒谷《ここ》にも迫っている」 青丹さまの表情も冴えなかった。 「頼理さま、幸人さまって……確か……」 「私の弟だ。腹違いの」 「顔は見目麗しいが、性格は最悪らしいぞ。頼理に濡れ衣を着せて東宮の座から引きずり下ろした。退屈が嫌い。ヘマトフィリアとかいうんだろ?血を見るのが二度の飯より好きらしい。かなりヤバい奴みたいだぞ」 白鬼丸の心の声が聞こえてきた。 「藤黄殿、何か仰いましたか?」 「いや、俺も青丹もなにも言ってないぞ」 「そうですか」 不思議そうにあたりを見る頼理さま。何気に白鬼丸と目があった。 「そんなまさか。白鬼丸は犬だ。あやかしではない。喋れる訳がない」

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