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運命の相手

「りん様」 一人の天狗が駆けてきた。年齢は僕とさほど変わらないかもしれない。 「は、初めまして。ぼ、ぼく、木蘭《もくらん》といいます」 はにかんだ笑顔が印象的な青年だった。そんなに緊張しなくてもいいのに。 「りんと申します。兄がお世話になっています」 軽く頭を下げた。 「どうしたの白鬼丸?」 なぜか白鬼丸が強張った表情で睨むように木蘭さんを見上げていた。 「みんなりん様のことを悪く言うけど、ぼ、僕はりん様の味方だよ。なんでも相談して」 「木蘭さんありがとう。様は付けなくていいです。呼び捨てでいいです」 木蘭さんは青丹さまたちと立ち話をしている頼理さまをチラチラと横目で何度か見ていた。もしかして顔見知りなのかな?聞こうと思ったら、 「じゃ、後で」 木蘭さんが急に駆け出した。背中の羽を広げ空へと飛んで行ってしまった。 「こそこそと楽しそうに何を話していた?」 不意に黒緋さまに声を掛けられたものだからどきっとした。 「アイツ、何者だ?」 「天狗だ」 「それは見れば分かる。俺が聞きたいのはそんなことじゃない」 腑に落ちないことがあるのか白鬼丸が珍しく声を荒げた。 半陰陽は国に災いをもたらす元凶だ。その言葉をふと思い出した。 僕と頼理さまと白鬼丸がここに来たせいでなんの関係もない天狗の皆さんと黒谷に住む住人を巻き込むことになる。そのことになぜもっと早く気付かなかったのだろう。木蘭さんの言う通りだ。悪く言われるのは当然のことだ。

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