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運命の相手

「まずはこの化け物をどうにかせねばな。頼理くれぐれも気を抜くなよ」 「御意」 頼理さまと惣右衛門さまが自分の背丈よりも何倍も大きい怪物に怯むことなく、きっと睨み付けた。 狼も牙を見せながら低い声でウウウと唸り声をあげながら一歩ずつ、怪物との歩を縮めていった。 「ここに隠れてろ。いいか、俺か頼理が迎えに来るまで、何があってもここに隠れていろ。絶対に音を出すなよ。鵺に勘づかれる」 「分かった」 「扇子は持ってるな?」 「うん。ここにある」 袖に触れた。 「急を要することが起きたら、念じろ。翡翠のことだ。助けに来る」 ここならひとまず安全だろうと奥の部屋に連れていかれ、押し入れみたいな薄暗く狭いスペースに押し込められた。 音が遮断され、不気味なくらいしーんと静まり返っていた。 頼理さまと白鬼丸。惣右衛門さまと天狗さんたち。それにキヌさん。みんなどうか無事でいて。祈ることしか出来ないことが歯痒かった。しばらくしてヒョーヒョーと鳴く声と、ギシギシと畳か何かが軋む音が聞こえてきた。恐怖で体がガタガタと震える。助けてと思わず声が出そうになり、白鬼丸の言いつけを思い出して慌てて口に手を当てた。そうだ。なるべく音を立てないようにしなきゃ。見付かったら殺される。 不安で胸が押し潰されそうになった。

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