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運命の相手

「なにやってるんだお前ら!」 騒ぎを聞きつけ生徒や先生たちが次から次に集まって来た。 「やべ、センコーだ。逃げろ!」 蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げだした。迅は僕を睨み付けて何かを呟くとゴミ箱を思いっきり蹴とばして足早に立ち去った。 「見世物じゃないのよ。教室に戻りなさい」 保健室の田辺先生が駆け寄ってくれて。タオルを何枚も肩に掛けてくれた。 「大丈夫……じゃないわよね。良かった、間に合って」 「なんで助けてくれたんですか?僕に関わったら……」 「そうね。この学校にもういれなくなるかもね」 田辺先生がちらっと犬を見た。 「あなたを助けるために校門のあの高い塀を飛び越えてきた彼の忠誠心に感服した。それだけのことよ」 田辺先生が偉いねと笑顔で声を掛けながら犬の頭を撫でてくれた。 それが白鬼丸との再会だった。 あの時助けた鬼の子どもがまさか犬の姿になって今度は僕を助けるために現れることになるなんで。予想もしていなかったら夢かと思うくらいに驚いた。出会ったころは五歳くらいの小さな子供だった白鬼丸が、四年後に再会したときは2メートルはゆうにこえる偉丈夫に成長していたから成長の早さにびっくり仰天して穴があくほど白鬼丸を見つめた。 この一件で僕は児童相談所に一時保護されることが決まり、転落したあの日はその児童相談所に向かうために電車に乗ろうとしていた。

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