60 / 87

運命の相手

「邪な心を持つお前らがどれだけりんを探しても無駄だ。りんの姿は見えぬわ」 惣右衛門さんの声が聞こえてきた。 「なんのことだ?」 「しらばっくれな」 「しらばっくれてなんかいない」 「じゃあ聞くが木蘭は何をそんなに必死で探しているんだ?戦より大事なものか?」 「うるさいな。我ら天狗より劣る人の癖に。威張るな!」 天狗の男が声を荒げた。 「鵺どもは何をしているんだ。さっさと此奴の口を封じろ!」 「鵺か?一匹残らず頼理と白鬼丸が退治したぞ」 「嘘だろ」 五匹はいたのに。信じられないと動揺する男。 「鬼を甘く見るな。鬼を敵に回すな。口を酸っぱくして何度も忠告したはずだぞ。年を取ってから産まれたややこほど可愛いものはないとな。おおかた迅に天狗の長にでもしてやると唆されたんだろう」 「うるさいな」 図星だったのか声が裏返る天狗の男。 「黙れ!吹き飛ばしてやる。神聖な場所に穢れである犬を連れ込むとはな。許さん」 葉っぱみたいなものを左右に振ろうとしたとき、目も止まらぬ早さで白いものが男の前を横切った。 「忌々しいくそ犬ども!」 葉っぱみたいなものを取られ地団駄を踏む男。 「犬ではないぞ」 狼が静かに口を開いた。

ともだちにシェアしよう!