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運命の相手
「痛くて動かすこともままならなかったのに不思議だ」
右手に力が微かに込められたのが分かった。
「人生朝露の如しだ。都に戻っても戻らなくても、お上に謀反を起こした罪で捕らわれ、いずれ殺されるだろう。だから都には帰らずこのままりんのそばにいると決めた。りんを守れるように青丹殿に稽古をつけてもらう」
「僕が育った町もすごい田舎で徒歩圏内にコンビニエンスストアもスーパーもないにもないの。お小遣いを貯めて週一回地区を回る移動スーパーでお菓子を一つだけ買うのが楽しみだったんだ。川で魚を取ったり、田んぼでいなごをとったり、それこそ毎日野山を駆け回っていた。野生児だった。昔は木に登れたけど今はどうだろう」
「野生児か、なかなか面白いな」
頼理さまが声を出して笑いだした。
「頼理さまが話してって言ったから……だから、その……」
恥を忍んで話したのに。恥ずかしくて穴があったら入りたい。そんな心持ちになった。
「私には難しい話で理解出来ぬが、りんといると本当に楽しい。どんな状況でもいつも明るいきみにどれだけ力をもらったか、いまもそうだ。私もりんみたく変われる。廃嫡になったとき、いずれは殺される身と人生を諦めてしまった。生きる屍のごとく無意味に生きていた。ありがとうりん、きみのお陰で前向きに生きる決意がついたよ」
自信に満ちた頼理さまの表情は見惚れるくらい凛々しくそして勇ましかった。小高い岡の上から下を見渡せば天狗たちと朝廷軍が戦う、まさに最前線だった。異世界から来た僕と白鬼丸を助けてくれた父上と母上と竜神さま。よそ者の僕たちを優しく迎えてくれた里のみんな。今助けに行くから待ってて。
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