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運命の相手
「實盛の母君は妖狐だと噂で耳にした。半妖ならもしやと思ったのだが、翠鳳殿のところにも良貴殿のところにもいなかった。となると亡き者にされたということだろう」
「もしや式神を裏で操っていたのは明叟さまですか?」
「間違えないだろう」
小高い丘の上で立ち止まり眼下を望むとあやかしの里があるの川の対岸側は濃い霧に包まれていて何も見えなかった。人とあやかしの里を繋ぐ赤い橋もすでに壊されたのか見えなかった。
「りんさまご無事で何よりです」
浅葱さんが草むらからぴょんっと勢いよく跳ねて姿を現したから驚いた。
「浅葱さんも無事でよかった。父上と母上とたぬこさんたち里のみんなは?」
「無事ですよ。ご安心くださいませ」
「浅葱さん、里に入るにはどうしたらいいですか?川を泳いで対岸に渡るしかないですか?」
さっきまで何もなかった川に赤い橋がかかっていたから思わず二度見してしまった。
「さぁ、さぁ、参りましょう。帰りましょう」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら浅葱さんが先に橋を渡りはじめた。同じ蛙だし声も似てるし浅葱さんには間違いないけれど違和感を感じた。
「どうしたりん?」
水無月さんが振り返った。
「浅葱さんじゃない」
「どこからどう見ても浅葱だろ?どこが違うんだ?」
「着物は同じだけど帯の結び方が違う。浅葱さんはいつも前で結んでいた。でも彼は後ろで結んでいる」
「さすがは翠鳳と翡翠の娘。よく見てるな」
水無月さんが狼から狐に変化した。
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