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運命の相手
「こちらの動きがなんで朝廷側に筒抜けになっているかずっと不思議だったんだ。天狗たちも一枚岩ではない。仲間を疑いたくはないが裏切り者がいるんじゃないかそう思って浅葱に命じひそかに探りをいれていたんだ。まさかお前だったとはな。すっかり騙されたよ」
胸を突き出し空いている手を腰におく翠鳳さま。歯を剝き出しにして蛇女を睨み付けた。
「りんだけでなく里の者たちを危ない目に遭わせたんだ。覚悟は出来ているんだろうな」
くくくと不気味に笑いながら蛇女の顔が最初とは違う顔に変わった。その顔に見覚えがあった。翠鳳さまの奥さんの一人だ。浅葱さんから翡翠さまとは犬猿の仲だと聞いたことがある。
「取り憑いた女の魂を食らい、その者に成り代わることが出来る。赤子が大の好物だ。五十年前に天狗の長によって封印されたはずだが」
アハハと蛇女が狂ったように笑いだした。
「なにがおかしい?」「りんだけは助ける。青丹のかわいい妹だからな」
意味深な笑みを浮かべて翠鳳さまを見る黒緋さま。
「わらわの正体に気付きもせぬうつけ者め」
血走った目で翠鳳さまを睨みつけた。
「うつけものはお前のほうだろ?」
バサバサッと羽をなびかせながらゆっくりと空から下りてきたのは黒緋さまだった。
「お前の正体に青丹と翡翠さまが気付かないわけがないだろ?翠鳳はお前に夢中になっていて耳をまったく貸してくれない。生気を吸いとられていることにもまったく気付いていない。だから化けの皮を剥がすためにわざと泳がせていたんだよ」
黒緋さまの言葉に心当たりがあるのかドキリとする翠鳳さま。
「りんだけは助ける。青丹のかわいい妹だからな」
意味深な笑みを浮かべて翠鳳さまを見る黒緋さま。
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