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運命の相手

「きみは強いね」 頼理さまが観念したように微かに笑んだ。 「私が弱いばかりにすまない」 「前と比べたら随分と成長したと思うぞ。中身は相変わらずややこのままだがな」 竜神さまがゲラゲラと笑い出した。 「さっさと済ませてしまえ。次いつ出来るか分からぬぞ。もしかしたら最後になるかも知れぬぞ」 「りゅ、竜神さま」 心の内を看破され頼理さまが真っ赤になっていた。 ここに来る前のことをふと思い出していた。 「りん、抱き締めてもいいか」 頼理さまが顔を寄せてきた。 答える前に抱き締められ、 「あっ……」 掠れた声が上がる。 前髪を掻きあげられたかと思うと、額にこつんと額が押し当てられた。 「ありがとう。嬉しいよ。りんと添い遂げられる。これほど幸せなことはない」 間近で、本当に本当に嬉しそうに微笑まれ、僕は真っ赤になった。なんだかこちらまで胸がほかほかする。幸せだけど照れ臭くて、赤くなったままこくりと頷くのが精一杯だった。 頼理さまやみんなが待っているんだもの。迅と決着をつけてなにがなんでも帰らなきゃ。 「白蛇さん、あなたの帰りを待っている人がいるんじゃない?もし帰るところがないから一緒にあやかしの里に帰ろう。父上も白鬼丸も黒緋さまも話せばみんな人たちばかりだから」 真っ赤な口を開けてシャーッと唸り声をあげる白蛇。 「世迷い言に惑わされないで。りんの飼い犬は狂暴でね、お前らの首根っこを咥えて一瞬で噛み殺す」 「白鬼丸はそんなことは絶対にしない。白鬼丸のことをなにも知らない癖に勝手なことを言わないで」 「黙れ!」 パーン、頬っぺに迅の平手打ちが飛んで来た。

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