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運命の相手

「りんの癖にこの僕に楯突く気?僕がいなかったら生き返ることなんか出来なかったのに。お前みたいな疫病神。生きる価値なんてないのに。虫けらみたいなお前が野垂れ死ぬことなく生きてこられたのは全部僕のお陰なんだからね、僕が父さんにお前を可愛がって頼んだからなんだよ、それ分かってる?」 じんじんと痛む頬を手で押さえながら迅を見上げた。 「そんな目で僕を見るな!」 迅が右手を振り上げた。 また叩かれる。反射的に目を閉じて顔を逸らした。 「生意気なその態度を僕が直してあげる」 ふふっと鼻で笑うと、 「お前たち外にいる鬼をどうにかして。蛇女の仇を取る絶好のチャンスだよ。一人でのこのこ乗り込んで来るなんて、本当にバカな男」 鬼?もしかして白鬼丸が助けに来てくれたの? おっかなびっくり目を開けると白蛇たちは一斉に姿を消し、代わりに奥から男たちがニタニタと薄笑いを浮かべながら一人また、一人と姿を現した。酔っぱらっているのか着物は乱れ、ふらふらと足元が覚束なかった。 「来ないで!」 逃げようとしたけど、見えない何かに足をがっしりと掴まれて身動きが取れなかった。 耐え難い恐怖が背を流れる。 継父に寝込みを襲われたときのことがフラッシュバックして、ガタガタと体が震えて止まらなくなってしまった。 「迅、ここにいたのか、探したぞ」 着衣の乱れた若い男性が入ってきた。 「こやつが迅をいじめる悪いやつか?」 「そうだよ、僕をいじめる極悪人だよ。しかも国に災いを招く半陰陽。ねぇ幸人、やっつけてよ。お願い」 迅が蠱惑的な笑みを浮かべながら、男性の腕に抱き付いた。

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