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運命の相手

「蛙、目の毒だ。さっさと着替えろ」 「相変わらず口が悪いですね」 「五月蠅いな。りんは年頃なんだ、少しは考えろ」 白鬼丸が浅葱さんに白い小袖を渡した。 「白鬼丸、無事だったんだね。良かった」 もう二度と会えないんじゃないか、そう覚悟していたから、嬉しくて涙が込み上げてきた。 「あんなところで死ぬわけにはいかないだろ」 浅葱さんが小袖をさっと羽織り腰紐をお腹を下側から包み込むようにして結んだ。 「これは返していただきますよ」 浅葱さんが落ちていた扇子を拾い上げた。 「實盛……嘘だろ。死んだはずでは……」 にわかには信じられなくて。茫然自失となる幸人さま。 「極楽浄土に行くにはまだ早いと阿弥陀仏様から門前払いをされまして、翠鳳殿のお陰で命拾いをしました。屋敷の外で戦っておられる頼理様や若いあやかし達の成長を見ずに死ぬわけには参りませんからね。それと……」 そこで言葉を止めると僕に優しく微笑みかけてくれた。 「阿弥陀仏様が予言されたこの世を救う竜神の巫女のご尊顔を生きて拝見したかったですし。ほんにまぁお似合いでございます。そこにいる偽物の巫女とは雲泥の差です。りん様、頼理様がお待ちですよ。ここは私と白鬼丸に任せて。お逃げなさい」 扇子を渡された。

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