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運命の相手
「迅、助けてくれ」
手を懸命に伸ばす幸人さま。
迅はぷいっとそっぽを向いた。
「ねぇ、りん。このひとをあげるから、代わりに頼理をちょうだい」
迅のまさかの一言に、聞き間違いじゃないか、一瞬自分の耳を疑った。
「自分で何を言ってるのか分かってる?」
「だってさぁ……」
迅が髪を指先で弄びながら、
「幸人といても全然面白くないんだもの。退屈しのぎに相手をしてあげたら本気になるし。僕は最初から頼理が良かった。恋愛経験がない奥手な頼理なら、りんより何倍も可愛い僕にすぐに夢中になると思っていたのに。どんだけアピールしても全然なびいてくれないし。何を考えているかさっぱり分かんないし」
幸人さまを助けるどころか、一方的に恨み辛みを言い立てる自分勝手な迅に、
「呆れてモノが言えない」
白鬼丸がズバッと切った。
「りんのほうがきみより、顔(かほ)は映(ゆし)。心根が優しく誰からも好かれるから、私もりんが愛し(めぐし)くて仕方がない」
頼理さまが刀を拾い上げた。
邪気が頼理さまをも取り込もうと蠢き出した。
僕が頼理さま会ったとき、彼に取り憑いていた物の怪が一瞬で姿を消したことを思い出し、気付いたときには駆け出していた。
「りん、待て!」
「無茶するな!」
白鬼丸と黒緋さまに止められたけれど、頼理さまを守れるのは僕しかいないもの。頼理さまや白鬼丸やみんなに守ってもらってばかりいるんだもの。今度は僕がみんなを守る番。だから怖いとは全然感じなかった。
「頼理さまと幸人さまを返して!」
「痴れ者め」
頼理さまに抱き付き、邪気に指先が触れた瞬間、くくくと不気味に嘲笑う女性の声が聞こえてきた。それからどうなったかよく覚えていない。ぷっつりと意識がなくなって、深い深い水の底へと体が沈んでいった。
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