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僕が選んだのは

「翠鳳と翡翠は娘が助かるなら自分達はどうなっても構わない。自分達の命をやるから娘を助けてほしいと竜神と都を守る四神に懇願した。翠鳳と翡翠はりんの置かれている境遇を知り怒り狂っていたぞ。家族ってなんだろうな。実の子を蔑ろにする親もいれば、血が繋がっていなくても実の子のように大事にする親もいる」 意識を取り戻した母さんの顔は真っ青になっていた。 「俺はおまえの顔をちゃんと覚えているぞ」 白烏姿の藤黄さまが白鬼丸の肩の上にちょこんと座った。 「産まれたややこがふたなりと分かると首を絞めて殺そうとしたよな。異変に気付いた産婆がすんでのところで止めたから事なきを得た」 「なぜそのことを」 「このややこは金になる。だから生かしておけ」 その言葉にぎくりとする母さん。額からはだらだらと冷や汗が流れていた。 「そなたの心には我が子を食らう魔物が棲んでいる。だから俺はややこを守ることにした。見て見ぬふりなど出来なかったからな」 見ず知らずの僕になぜ優しくしてくれるのだろう。そのことがずっと引っ掛かっていた。ようやくその理由が分かった。ずっと昔から藤黄さまは僕を見守ってくれていた。今頃気付くなんて。 「長居は無用だ。りん、帰るぞ」 「白鬼丸、ひとつだけ頼み事があるの」 「七音に会いたいってだろ?」 「なんで分かったの?」 「なんでだろうな」 白鬼丸がくすりと笑った。 「頼理に会いたくないのか?りん不足でひっからびて死んでいるかもな」 「頼理さまを勝手に殺さないで」 頬っぺたをこれでもかと膨らませると、 「怒るだけの元気があって良かった」 白鬼丸がドアを開けると、どこからともなくあやかしたちが次から次へと這い出してきた。 頭に角が生えた浴衣姿の男性を先頭に百鬼夜行がはじまった。

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